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0801 奇病主
ワンピース









大きな窓のある風通しと日当たりのいい頑丈な鉄格子で仕切られた部屋に、1人ポツンと座る青年。椅子とテーブルしかない簡素な檻の中に、およそその場所に似つかわしくない程色鮮やかに美しく咲き誇る花があった。檻の中の青年の体に咲く、花。




「…いい天気だなぁ」




体から色鮮やかな花を咲かせながら、青年は囚われてるとは思えないような呑気な声を出した。





……という訳ではーーいオレ○○。シリアスなモノローグはフェイクだ!いや〜この世に生まれて27年、1年足りともまともな日々を過ごしたことのない人生を送ってきたわけですけども。
簡単に説明するとオギャアと爆誕!→1歳前に体から蔦が→父「ちょ、俺の子じゃないから…」→路地へポーイ!

ポイ捨てだめ!絶対!ほんとに言うけど子供のポイ捨てはダメだよ!!捨てられる方の身にもなってよ!!
コホン、まぁその後身体から花が生える不思議体質のせいで奴隷としてなんとか野良犬以下の生活を送ってこれたわけなんですけども…。1年前にオレの元ご主人様を何があったのかは知らないけど殺して偶然オレを見つけた物好きな今のご主人様のお陰でこの1年は安定した生活を送れている。いやほんと人生初。心から感謝。
その物好きな飼い主が与えてくれたウルトラに日当たりのいい部屋で毎日3食ご飯を与えられ甲斐甲斐しく世話をされ時々散歩にまで連れてってもらえるという超VIP待遇をされてるせいかオレの身体から咲く花が引くぐらい綺麗に咲き誇ってる…超瑞々しい…色が鮮やかすぎる…こわ…。
主に花が生えてくる上半身は花が傷つかないようにとあと花が見やすいようにって理由で常に裸だけど物心ついた頃から奴隷だからそれくらい慣れてる慣れてる。むしろ今までもっと酷かったし。そういう意味で()




「いやーほんと捨てる神あれば拾う神ありなんだなー」




今までの人生を思い出してしみじみ…ほんとしみじみそう感じる。苦節27年、ようやく初めて普通の生活を手に入れました…!!え、普通じゃないって?さてはアンチだなおめー!
コホン…思わず涙がほろりしそうになったけど気を取り直して改めて言うけどオレは幸せです。今の生活に満足しています。




「○○、ご飯持ってきたわよ」




部屋の扉が開かれカートを押しながらいつもの女性が入ってくる。彼女はベビー5、今のご主人様の部下だ。ちなみにめちゃくちゃ可愛いのにめちゃくちゃに騙されやすい。今まで結婚詐欺にかなりあってきたそう。




「いつもありがとうベビー5。感謝してるよー」


「わ、私必要とされてる…!?いいのよ、なんでも言って!」




毎日3食ご飯を運んでくれてるのは彼女で言うなれば俺のご飯係。できることならこの超絶優しい女の子は俺が毎日守ってあげたい。
しかし奴隷のオレが心配しても出来ることなど何もないので大人しくご飯を受け取って椅子に座る。わーい今日のご飯も美味しそうだ。




「そうだ」




はたと気が付いて胸元の1番綺麗に見えた花を掴んでゆっくり引っこ抜いて、そのまま鉄格子の間から彼女に差し出しす。日頃の感謝に花を送るのがいいって前の前の前の飼い主あたりがそう言いながら俺から花をブチブチ引っこ抜いてたのを思い出した。




「お礼。1週間くらいもつと思うよ」


「え!?」




濃い紅色の百合のような花は彼女の雰囲気にもよく合うと思う、我ながらナイスチョイス。
しかし彼女は花を受け取るどころかサッと青ざめた。




「だ、ダメじゃない○○!若様がお怒りになるわよ!?」


「え?」


「フッフッフッ…俺がなんだって?」




そしてその時、なんともいいタイミングで現れたのは俺の今のご主人様。いいタイミング過ぎてほんとは隠れて出るタイミングを伺ってたんじゃないかとも思える。まぁここは彼の家で俺は彼のものだから彼がどこでどうしてようが俺には一切何もないのだけど。




「こんにちはご主人様」




ペタッと床に座り込んで頭を下げると途端に体が動かなくなった。そしてまるで誰かに操られているように立ち上がり、檻の中に一つだけある椅子に勝手に座る。すると体に自由が戻った。




「何度も言わせるな○○、その気色悪ぃ挨拶はやめろ」


「申し訳ありませんご主人様。つい、」




最初の飼い主にそう躾られたと言ったらベビー5さん曰くその日1日機嫌が悪かったようだから今日は言わずに飲み込んだ。
ご主人様の前で椅子に座っていることが気持ち悪くて動こうとすると、また体が動かなくなる。ベビー5さん曰くこれはご主人様の能力らしい。




「それからご主人様じゃねえ、若だ」


「わか?」


「○○、若様よ」


「わかさま」




そう言えば面白そうにフッフッフッと笑うご主人様にご主人様が楽しそうなら良かったと俺もニコニコ笑う。いやぁ今日も平和だなぁ。




「その喋り方、また読んだ本に影響されてるな。今日は何を読んだ?」




問われるままテーブルに置いていた本を掲げて見せると題名を確認したわかさまはまた楽しそうにフッフッフッと笑った。フッフッフッ、今日も平和だ!




「持ってきたのはトレーボルか」


「はいそうです」


「フッフッフッ、まったくあいつは…」


「んねー」


「やめろ」




今度は真顔で怒られた。んねー。




End