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0921 個性『人魚』主
僕のヒーローアカデミア









車椅子、松葉杖、そして今はT字のステッキとかなり進歩した。その内手放しで歩けるようになるだろう。
ここまで頑張った自分を褒めながら家への帰り道の橋を歩いていると、ふいに前を歩いてきた人の足が杖を引っかけた。体重をかけていた杖の支えを失って体は簡単に傾き、コンクリートの地面と正面衝突…




「大丈夫ですか!?」




する前に間一髪で抱き止められた。ドキドキしながらそのまま体を起こしてもらってホッと心臓をなで下ろす。助かった、危うくコンクリートと熱いキスを交わすとこだった。鼻血が出るほど熱いキスなんてごめんだ。




「ありがとう、助かったよ」




俺を助けてくれた青い髪にメガネをかけたヒーローにお礼を言う。ていうかこの制服雄英高校じゃん。まじでヒーロー。




「飯田くん、大丈夫!?」


「急に走り出すからどしたんかと思ったよ!」




駆け寄ってきた男の子と女の子は友達なんだろう、同じ制服を着てる。
ヒーローの足元を見ると何かごついエンジンのようなものがついていて、これが彼の個性なんだとわかる。きっとこの足で俺を助けてくれたんだ、本当に感謝。
友達に事情を説明し終えたらしい彼はまるでロボのような細密な動きで俺の方を向いた。




「お怪我はありませんか?酷い人がいるものです」


「大丈夫だよ、ありがとう」




慣れてるから、と返すと顔を顰められる。それでも実際にいるんだから仕方ない。ああやって杖を蹴られたのだって初めてじゃないし、車椅子の時だってひどい人はいた。




「でも君は助けてくれた。世の中悪い人ばかりじゃないね」




ニッコリ笑って欄干にもたれ掛かると…目の端に看板が見えた。

『老朽化に伴い補強工事のお知らせ』

…おや?




『ドボンっ!』




「わーーーー!?!?」


「えーーーー!?」


「なーーーーーーー!!!」




水の中でも聞こえるくらい大きな3人の声が響いた。まさかこの年で川に落ちるなんて恥ずかしすぎる。しかもちょっと格好つけてたのに…うわ、しばらく上がりたくない。




「どどどどうしよう!?!?」


「デクくん、大人の人呼んで…飯田くん!?」


「待っててください、今行きます!」


「あ、大丈夫だよ心配しないで…おわっ!?」




恥ずかしく思いながら水中から顔を出すのと俺を助けてくれた彼が飛び込んでくるのはほぼ同時だった。目の前でド派手に水しぶきが上がる。




「ちょ、大丈夫か!?君のそのエンジンって濡れても故障しない!?ていうか泳げるの!?」


「はい!俺は大丈夫で…え?」




急いで寄った俺を見て彼が動きを止めた。そしてそのまま沈んでいく…のを慌てて抱きとめる。




「驚かせたかな…これが俺の個性なんだ」




パシャ、と尾びれで海面を叩いてみせた。腰から下が鱗のついた魚、おとぎ話に出てくる人魚そっくり。俺の場合、濡れないとこんな姿にはならないけど。




「こんな個性だからか生まれつき歩けなくてな。最近やっと訓練して歩けるようになったんだけど…なぁ、大丈夫?」


「はっ!だ、大丈夫です!!」




大丈夫って言ってるけど顔真っ赤だぞ、風邪ひいちゃった??




End