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0902 亡者主
獄都事変










「貴様を閻魔庁へと連行する」


「…へ?」




拝啓オレ様。突然目の前にイケメンが現れました。敬具。




「いやいやいやいやえ?ビビったーお兄さん俺が見えるの?」


「俺は斬島、獄卒だ」


「獄卒?なにそれ」




軍服みたいな服着たお兄さんに地獄から来たとか言われてちょっとビビる。え、地獄…?俺地獄からお迎え来たの…?




「深夜に民家を訪れ人に恐怖を与えているのはお前だな?」


「え、なにそれ!!」




驚いてよくよく話を聞いてみるとどうやら最近夜中に起きてると窓を叩く音がして見てみると外に知らない若い男が立っているらしい…うん、あのね、それ…




「完全に俺だわごめん…!」




深々頭を下げたい…!驚かせた人ごめん!マジでそんなビビらすつもりなかったの!マジで!マジで!!




「いや、それには理由があんのよ!見てこいつ!」


「…猫、か?」




後ろのダンボールから抱いて見せたら斬島って名乗った男がキョトンとした。
いやね、なんで俺が毎晩毎晩人様のお宅を訪ねてるかと言うとね。この黒子猫ちゃんの貰い手を探してたわけですよ。




「いや捨てられてんの見つけちゃったもんは仕方ないでしょ俺もともと猫好きでさー。これが気がかりで成仏できやしねえ」


「…つまり、この猫が未練だと?」


「うんそう」




しばらくの沈黙のあと斬島が深い溜息を吐いた。そして俺から黒子猫通称黒子をとる。




「この猫は俺が責任もって面倒みよう。だからお前は大人しく閻魔庁へとついて来い」


「え、まじ!?ほんとに!?」




いきなりの宣告だけどやったー!!黒子の貰い手が決まった、幸せになれよ黒子ーー!!




「これで安心して成仏できるわ、サンキュー斬島!」


「…あぁ」




くるっと背を向けて歩き出した斬島について歩いていく。さーさー、輪廻転生!
















肋角さんに言い渡されて訪れた現世のとある路地裏で件の亡者を見付けた。資料にあった通り20代前半とまだ若く、頭から被ったように血だらけの姿だ。
教えられた噂話、夜中窓を叩く音に覗いてみれば血塗れの男が立っている…その姿を見た人間、特に男は、数日で近親者、主に子供を殴り殺してしまうらしい。
…この亡者は、父親に殴り殺されている。それが原因で現世に留まり人々に仇を為していると予想したが、出てきたのが猫とは。正直戸惑いを隠しきれない。恨みは、ないのか。
しかし晴れやかな顔で大人しく後ろを着いてくる亡者に、どうか刑が軽く済むようにと思わずにはいられなかった。




End