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0828 ピアス主
ヒプノシスマイク










「やあ○○くん、久しぶりだね」


「こんにちは寂雷先生」




診察室のドアをくぐると椅子に座った髪の長い男の人がこっちを見てる。俺もにこやかに挨拶を返すと手前に置いてある椅子に座った。




「それで、今日はどうしたのかな?」


「あ、またピアス開けてほしいんですけど…」




べ、と舌を出して指差すと寂雷先生の顔がちょびっとだけ曇った。俺が先生にピアッシングを頼むのはもうこれで5回目だからだと思う。前回、あまり体に傷をつけるのは…って言われたのはちゃんと覚えてる。




「○○くん、舌に開けるのは2回目だね」


「そうですね。だから今回はちょっと先っぽに…」


「耳を見せてごらん」




優しく、でも逆らえない何かを含んだ言葉と共にその目を直視したらNOとは言えなかった。俺はちょっと躊躇ったが結局長めの髪を耳にかけて隠してた耳を晒す。




「…増えてるね」




案の定寂雷先生の口から溜息が零れた。




「何か辛い事があったようだね」


「いいえ」




上げた髪をおろしながらピアスだらけの耳に触る。もう開けるスペースもない程穴だらけの耳。あんまり人に見せるもんじゃない、気持ち悪い。




「しばらく来ないと思ったら、自分で開けて凌いでいたのかい」


「あは…」


「君は自分で耳以外に開けるのは怖いと言っていたものね」


「そうですね」


「耳に開ける場所がなくなったから、仕方なく体に開けるために私の所へ来たということかい」




全て見透かされていることにちょっとだけ居心地の悪さを感じて椅子の上で身じろぎするがなんの効果もない。ただソワソワしただけ。
落ち着かなくてまた耳を触って誤魔化す。こんな仕草も先生にかかれば何かしらの心理状態のサインとして捉えられるんだろう。




「君はストレスから逃れるためにピアッシングをする、それはリストカットと同じだよ」


「やだなそんな不健康なものと一緒にしないでくださいよ。リスカなんか傷残るしそんなの親に見つかったら心配かけるじゃないですか。親に心配かけたくないんです俺は本当に、本当に」




だからリスカはしません、そこまで言うと先生は何も言わずただ俺を見つめた。何か言いたいんだろうけど、俺は先生じゃないからわからない。わからないフリさせて。




「…口を開けて」




そう言って器具を取り出した先生に、俺は一瞬の痛みを求めて口を開けた。




End