池袋サディスティックス

夜の9時、おれは面接に行けるような小綺麗な格好に着替えて、池袋ウエストゲートパークのパイプ状の椅子に座ってアサヒを待った。

「待たせてごめんごめん」

そしてそこに副官を連れたアサヒがやってきた。それから合流するとすぐにもう大丈夫だから、とその男を帰した。
いいのか、と問うと仲良くもない男の子と歩くのも疲れるのよ、と冗談めかして彼女は言った。そりゃそうだ。頷いてお疲れの女王を労わってやる。
すると彼女はふにゃりと緩く笑ったが、すぐに仕事モードに切り替わったようで顔を引き締めた。おれはどちらかといえば、何も考えないで笑っているアサヒの顔の方が好きなんだがそうもいかない。今の彼女は誰にも助けて貰えない哀れな弱いガキどもを救いあげる強く慈悲深き女王なのだ。
そんな女王と。店へ並んで歩きながら作戦会議を始めた。

「わたしたち、たまたま同じ面接日になったけど赤の他人ということでよろしく。目的は店の違法性を暴いて業務を停止させること。依頼人は店で働くユウキちゃん、19歳。高校の後輩、可愛くて責任感があっていい子なんだけど、昔から男運がなくてねえ・・・」

それだけ聞けば充分だった。使い古された典型的なシナリオ。ろくでもない男と恋仲になる、いつのまにか借金の連帯保証人にされる、男は有り金を全て持ち去りドロン。残された女は借金返済のために売られる。

「どうせ勝手に保証人にされたんだろ、弁護士になんとかして貰えないのか」
「もっと早いうちに相談してくれたらよかったんだけど。なんか最初に少しでも返済しちゃうと全額返済の義務が出来ちゃうんだってさ。法的には支払いを渋るこっちが悪者よ、困っちゃうよね。マコトも気をつけなよ」

それだけ言うとそれじゃ、あの店だから先に行くねと早歩きになり店へと消えていった。おれは一旦立ち止まる。これはシンプルで単純な問題だが解決は面倒くさそうだなと思った。
オーナーがはやめに尻尾を見せてくれるやつだと、いいんだけどな。


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