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酔い覚ましに街を京一と歩いた。
上機嫌な天使といるとその足は遠回りしつつも自然と東池袋中央公園、エンジェルパークへ向いている。
その入口で京一は一瞬躊躇った後、大きくそこへ踏み込んだ。

「あれ以来、初めて来るな」

夜も深まりかけた東口公園の人手は少なかった。何人かの不良や帰りあぐねているカップルがたむろするくらい。
京一はそんな周囲をぐるりと見渡しいきなり黙り込むと、体を慣らすように小さく飛んだ。それからスマートフォンを取り出すとなにやら操作して俺に渡す。

「持ってて」

やがてそのスマホから鳴り出すあの日と同じバルトークの弦楽四重奏。静かに踊り出した京一に周りのガキどもは気が付き足を止めて、囲い出す。京一さんだ、誰かが口々にそう呟くように言ったがすぐに黙り込んであいつのダンスに見とれた。アサヒが言っていることに間違いはなかったのだ。
踊り終わり、荒い息を吐く京一に対して熱い歓声があがり赤を身につけた奴らが一斉に駆け寄る。

「京一さん」

そこへ聞き覚えのある声。振り向くと、現ヘッドのシゲルが心底嬉しそうな顔でそこに立っていた。
あの夏の戦争で一生背負っていかなければならない大怪我を追ってしまったが彼は自分の選んだ人生に悔いはないというようにこの池袋で踏ん張って堂々と暮らしている。

「シゲル」

京一は嬉しそうに笑って両手を広げる。アメリカンなやつ。
シゲルと再会の抱擁を交わしていた彼に頷いて、そばに居た顔見知りのメンバーに京一のスマホを預けるとおれはそっとエンジェルパークを出た。今夜あの公園で、話が尽きることはないだろう。
天使たちの水入らずの時間にこのおれがいるのは、無粋なのだ。


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