アウトサイダー・ロマンス
「たまには実家かえれよ、おふくろさん心配してるぞ」
マコトと別れる時はいつもその台詞で締めくくられる。わかってるよ、とこれまたお決まりの返事をすれば彼はいつも通り本当にわかっているのかとばかりの顔。
大丈夫だってば、そう念を押してオートクローズドアを閉めた。
「いいよ、ごめんね。車出して」
そのままそう呟くように言うと運転手は頷いて車を滑らせた。するとキングがようやく口を開く。今日初めての会話。
「アサヒ、実家帰るなら明日休め」
「・・・別に、マコトはああいうけど先月会ったばかりだから大丈夫だよ」
わたしは同じ池袋内で親元を離れたけど遠方に就職した友だちなんかは年に数回しか帰って来ない。普通、そんなもんだろう。
彼はそうか、と呟いてこちらを見た。切れ長の瞳がわたしを映す。わかってるってば。親は大事にってね。
それ以上何も言われたくなくてふいと視線をずらした。
「・・・いい日本酒を昨日貰った。親父さんに持って行ってあげるといい。おれは飲む暇ないし」
「・・・わかったわ、ありがとう」
だけど、また彼はそうやって気を使う。
昔からわたしは奔放で親に迷惑かけてきた。だから今更タカシからわたしの両親に気を使うことないのにね。ため息をついてスモークガラス越しに外を見た。流れていくいつもと変わらない街の景色。変わらないわたし達。でも時間は確実に過ぎている。このままじゃダメなことなんて、わかってる。
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