女の勘は嘘をつかない

たまには実家に帰ろうと西一番街に赴いた。あともう少しで我が家。しかしその手前で足がぴたりと止まった。あいつがいたのだ。
隣の家の幼馴染、真島 誠。それだけじゃあない。目の前には小柄で派手な女の子。どう見ても客じゃない距離感。絶対に彼女だと女の勘が告げていた。
にやりと上がる口元を抑えられない。弟も同然の幼馴染をどうやってからかってやろうかと思いつつ再び歩を進める。すると当然マコトがわたしに気がついておう、と片手をあげた。ついでに彼女が振り向く。

「おかえり、アサヒ。紹介するよ、おれの彼女の・・・」

女の目がぎらりと肉食獣のように光った。おかげでマコトのそのあとの言葉は全く頭に入ってこなかった。
世界はわたしとこの女のふたりだけ。すぐに彼女はにっこりと愛想のよさそうな笑みを浮かべたけれど、わたしの女の勘が危険な女だと警鐘を鳴らした。どうもあの女、いけ好かない。



「どうしてクイーンの機嫌、悪いんですか」

ツインタワー1号2号を師事とする少年が彼らにそう耳打ちした。おいおい、聞こえてるぞ少年よ。
しかしその事をツインタワーも隣に座る安藤 崇も諌めなかった。はいはいわたしが悪いですよ。そっぽを向いて頬杖をつく。そんなわたしの態度を全く気にする事はなくツインタワーのひとりが涼しい声で言った。

「果物屋に彼女が出来てからだな」
「ちーがーいーまーすー!別にマコトに彼女が出来ようが彼氏が出来ようが知ったこっちゃないし」

いや彼氏が出来たらさすがに驚くが。ツインタワーの答えにそうなんでもないように答えてさっさと次の仕事を持ってきてと言葉を続けた。
すると一条くんがワープロでまとめた資料を手渡してきながらじゃあどうしてですかと声変わり中のざらざら声で訊ねてくる。4人分の視線を注がれてわたしは戸惑いながら小さな声で答えた。

「・・・女の勘があの女は危険だって言ってるの」

キングが呆れたように鼻を鳴らした。
全員呆れたのか言葉もなく仕事に戻っていく。なによ、女の勘は信じるべきなのに。
男どもにそう心中説教をするとわたしも仕事に集中しようとした。
ちなみにその後、マコトはわたしの勘の言う通りあの女に酷い目に合わされるのだけれどわたしたち到底それどころじゃなく、ほら言ったでしょうという言葉を口にすることは出来なかった。


前 /
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -