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礼にいは明確な返事をしなかった。結局は平行線上。赤く染まり始めた狭い空を見上げた。赤色。Rエンジェルス。尾崎 京一。 その時、ふと視界の中にその男が入った。
人混みの中をひょいひょいと白いパーカーを着て歩くやつは目立たないようにしているつもりなのか。しかしその長身と隠しきれないオーラが目を引いた。声をかけようとその後を追いかけて行く。

「京一」

人の隙間を縫い、曲がり角を曲がる。しかしそこにいたのは思い描いていた人とは違う人物だった。

「マコト!」

出会い頭にぶつかりそうなったのは今朝別れたばかりの、少しやつれた顔のアサヒだった。彼女も驚いたように声を上げる。そんな彼女にあたりを見回しながら訊いた。

「あれ、ここに京一来なかったか?」
「京一?知らないけど・・・ごめん、急いでるんだ。早く車のところ戻らないとキングも一条も心配するから。あ、そうだ。キング戻ってきたんだよ、マコトのおかげ。ありがとう」
「さっき礼にいにきいたよ、よかったな。それよりお前ひとりで何してたんだ。車まで送ってやるから連絡いれときな」
「ちょっと野暮用。ありがとう、マコト。あんたも一人歩き気をつけてよ」

まあいいや。別になにか伝えたいことがあった訳ではない。人混みに紛れて見失った京一を諦めて、アサヒに着いて来た道を引き返した。


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