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そして考える。
おれはこの街を護りたい。誰の血を流させたくない。涙を見たくない。
アサヒとゆっくり話せたおかげで多少は頭の中がすっきりしていた。
とりあえずGボーイズにタカシを戻す算段は着いた。次はいかにカラスの頭をおびき寄せるか。奴はキングを下ろしたがっている。そこでふと悪い考えが頭をよぎった。
キングを、安藤 崇という男を王座から引き下ろしたいのは磯貝だけじゃない。警察もだ。あいつがいるかぎりグレーゾーンは消えない。思わず走り出す。
行先は礼にいの住むタワーマンション。礼にいは昔からずっといい兄貴分だった。優秀で、小学生相手に大真面目に勉強をみてくれたり、遊んでくれたり。
大人になってからも文句を言いつつもおれの無茶な作戦に手を貸してくれた。
ずっとずっと同じようなことを考えながら池袋の街を走り抜けて、タワーマンションの傍まで来るとおれは恐る恐るスマートフォンを抜く。
そのまま電話帳を開いても、震える親指が横山 礼一郎の名前をタップするのを躊躇った。しかしここで聞くのをやめても仕方がない。
それでもファイブコールで出なかったら電話を切ろうと内心思った。しかしそんな思いと裏腹にスリーコール目で彼は応答した。いつもより冷たい声。

「わたしを頼るのはやめたんじゃなかったか、マコト」
「ちがう。ただ、聞きたいんだ」

一息おく。向こうも黙っていた。

「横山さん、磯貝と繋がってないか?目撃者が少ない中、タカシのそばでアサヒを刺すように指示したのは」

その先の言葉は出てこなかった。向こうも黙っている。しばしの沈黙。やがて礼にいが切り出した。

「マコト、敵は敵の顔をしていない、わかるか」
「分かってる、だから」
「いまのが幼馴染のよしみの最後のアドバイスだよ。これ以上は関われない。君はアサヒを病院からさらった犯罪者の身内。おかげで安藤 崇の無罪も証明されて釈放しなくてはならなくなった」

最後に礼にいはそうボヤいて電話を切った。彼はアサヒへの傷害への関与を認めるとも認めないとも言える曖昧な答えしか残さなかった。タワーマンションを見上げる。ため息をついて、その場を後にした。


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