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「アサヒの病室はここだ」

プリントアウトした病院の地図をGボーイズ&ガールズの前に置いて、あいつの病室に赤ペンで丸をつけた。
たまたま病院に出入りするリネンのクリーニング業者でバイトしているやつがいて、そいつの手引きで中に忍び込むことにしたのだ。

「クイーンを確保したら怪しまれず、だが迅速に病院を出てここで落ち合う。いいな」

精鋭5人は力強く頷いた。そしてもう一度作戦を確認すると彼らは車を後にした。
おれは落ち着きなく座り直して、ズボンのポケットからLARKを取り出した。ぺしゃんこに潰れたソフトボックス。ああ、しまった。買い忘れていた。
しかしその横で一条がさっと新しいLARKを開封し、慣れた手つきで1本を取りやすいようにしてから俺にくれた。
ああそうだ、おれはキングなんだ。そこでそう思い直して、その煙草を受け取ると口に咥えた。すかさず差し出されるターボライター。
おれは一息吸い込んで、そしてゆっくり煙を吐き出した。ああ、落ち着かない。

「悪いな、タカシならもっとどっしり構えてるだろう」
「そんな、キングも待つのは苦手ですよ。だから自らも作戦行動をしたがります」

いつも前線に立ちたがるタカシをずっと見続けてきた。困ったように笑う一条を見ておれもつられて笑う。

「そうか、あいつもか」
「そんなに心配しなくとも大丈夫ですよ、マコトさん。あの日キングが王の座を貴方に明け渡すと言ったんですよね。それはきっと安藤 崇になれという意味じゃない」

クルマのクーラーの風で一条の銀髪が揺れた。これが若くして大組織GボーイズのNo.2になった所以か。
一条が差し出してきた灰皿に灰を落とした。
その時だ。ばたばたと数人が走り寄る音がしたと思ったらすぐに車のトランクが開き、シーツを抱えた数人がなだれ込んでくる。そして外に残ったひとりがトランクの扉を閉めると同時に誰かが叫んだ。

「出してください!」

運転手がアクセルを踏んだ。突然の重力に前かがみになる。おれは後ろを振り向いてワンボックスの広いトランクを覗き込んだ。

「アサヒは」
「無事っす、ただ見張りが多くて無理矢理連れてきたんすけど」
「バレたか、まあいい。予定より多めに走ってくれ。いないとは思うが一応な」

シーツに包まれて眠るアサヒの顔はこんな状況にも関わらず柔らかだった。


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