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Gボーイズのメルセデスベンツには深刻そうな顔の京一がすでに乗り込んでいた。その横に滑り込み、まもなく車が静かに走り出すと京一はこちらを見ずに低い声で呟くように言う。

「ほんの一瞬だった。気がついたタカシが走り寄るまもなくアサヒは刺された」

そして駆けつけた警察は、周りの証言も無視してそばに居たタカシを引っ張って行った。運が悪いことに、目撃者はいたがGボーイズしかいなかったのだ。警察はやつらの言うことを信用しない。

「あいつは大丈夫だ、薬で眠らされてはいるが顔色も悪くない」

疲れた。椅子に深く座り直して腕を組む。

「どうしようか、マコト。どうしたら磯貝をひっぱり出して潰せる。このままじゃG&R連合軍がなくなるのも時間の問題だ」
「わかってる、とりあえずタカシの釈放を最優先でいいな。あの眠り姫を奪還して目覚めさせる。一条、カタギの容姿をしたGボーイズ&ガールズを集めろ」

助手席の一条は頷いてスマホを抜く。そして京一が驚いたような声を上げておれの肩を掴んだ。

「病院に忍び込んで無理矢理連れてくる気なのか、リスクが高すぎる」
「闇医者のツテがある、それにあいつが目覚めて証言をしたらすぐに病院に返す」

やつは思い切り不服そうな顔をした。おれだって不服だ、誰かがそんなことを言い出したら京一と同じ反応をするだろう。しかし強硬手段に及ばざる得なかった。Gボーイズを潰すわけにはいかない。おれはいま池袋の王なのだ、ひとりよりみんなのために。サルが最高のバランスだと言ったこの構図を壊すわけにはいかない。
キングがいつも抱えているだろうひどい罪悪感を胸に、おれは柔らかな座席に深く座り直すのだった。


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