16
昼前、おれたちはウエストゲートパークに一同に介した。出歩くガキは皆4、5人で固まっている。街の空気はすっかりあの日の夏と同じだった。
「酷すぎる、深夜にちょっとコンビニ行ったくらいで。しかもエンデンジャーは青を身につけていなかった」
「カラスも元はみんなGボーイズやRエンジェルズだ、顔が割れていたんだよ」
昨日までの友人を刺したり殴ったり。どうしてそんなことが出来るのだろうか。おれはいまタカシにどんな酷いことをされたとしても、明日の奴を刺すことなんて出来ない。
京一が喋りながら手のひらで弄りまわす真新しい煙草の箱を眺めながらそう思った。黄色のアメスピ。
「そういえば、お前さっきまでどこに」
「シゲルの家、武闘派の少ないRエンジェルスだって報復戦をしたがって爆発寸前なんだ」
アサヒの予想通り、上からの圧力で抑えられるのも時間の問題であるようだった。
「血が見たいやつはさっさと黒になればいいんだ。うちはうち、よそはよそ」
その言葉とともに、Zippoの蓋が上がる高い金属音。京一がそう言い終えとともに煙草を咥えたのを見て、アサヒが火を差し出したのだ。
「ごめんね、面倒押し付けたみたいになっちゃって」
「アサヒの言う通り溜まっていたから構わない」
ふたりは笑い合う。いつの間にか随分と仲良くなっていたようだ。
それを見たタカシがなにも言わずにセブンスターを咥えた。しかしあいつは気がつかずに京一を見ていた。そのままなにも言わずにダンヒルの黄金色をしたガスライターを取り出す哀れな王さま。
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