きみに触れたい

確認したいことがあった。なのでアサヒが朝の準備をする部屋をノックして覗き込んだ。
そこでは彼女が長く伸ばした綺麗な髪をまとめている途中だった。ふたつに分けた髪を三つ編みにして、交差させてから耳の後ろでピンでとめる髪型。名前なんて知らなかったけれど、彼女の後ろ姿はよく見ていたのでやり方はなんとなく理解していた。

「アサヒ、この資料のここなんだが・・・ああ手止めなくていいのに」
「えーなに、いいよ。そんなに時間かかることじゃないでしょ」

しかし彼女は髪を三つ編みにする手を止めて、おれが持っていたレジュメに手を伸ばす。軽く目を通すとああ、これねと説明を始める。それを聞きつつも、見慣れない下ろした髪が気になって思わず触れた。アサヒが驚いて鏡越しにおれを見る。

「ちょっと、聞いてるの」
「聞いてる、続けろ」

手を離したせいで緩んでしまった三つ編みを手にして、手ぐしで解すとまた最初から結い始める。頭の上から少し髪をとり、下に行くにつれて残りの髪も拾って編んでいく。編み込みって言うんだよな。これは知っている。
当のアサヒは呆れたように鏡越しにおれを見つめた後にまた説明を開始した。
そう、わかった。簡単な相槌を打ち、洗面台に置かれていた小さなヘアゴムで髪を括る。もう半分の髪に手をのばした。
もういいよ、アサヒはもう一度抵抗の言葉を言ったが無視をした。

「よく抱いた女の子の髪も結んであげてるの?」
「そんな面倒臭いことするわけないだろ」
「そう?じゃあやっぱりタカシってなんでも上手くやっちゃうんだね。自分でやるより綺麗かも」

そして抵抗を諦めたアサヒがそうからかうように言ってヘアゴムとピンを手渡してきた。手先の器用さには自信があった。そうでないとさすがに手を出してはいない。いや、分からない。彼女に触れられるいい機会だとチャレンジしていたかも知れない。
それからピンで上手く編んだ髪を固定してやってよく見慣れた髪型に仕上げた。
鏡越しに彼女の顔を見る。綺麗に色付いた頬は元の血色かチークの色か分からなかった。


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