蚊帳の外

その日は突然に冷え込んだので慌てて去年までのコートを引っ張り出した。しかしいざ着てみると袖丈はつんつるてんで身頃も僅かにつってしまい身体が動かしづらい。しまった、また背が伸びたようだと誇らしいような煩わしいような気持ちに襲われた。もう高校3年なのに。油断してしまっていた。慌てて部屋を出ておふくろに声をかけた。

「おふくろー、別のなかったかな。これきついんだけど」
「あんたその歳でまだ伸びるのかい」

そしておふくろに仕方なく声をかけるとおふくろは呆れたような顔をしながら財布を取り出して高校生にしてはなかなかの額を握らせてくれる。

「帰りに買ってきな、援助するのはそれで最後だからね。これからは自分の金で買いな」

バイトは面倒臭そうなのでやる気はなかった。だから母からの好意をありがたくポケットに突っ込んで家を出た。彩度の低い冬の街。高校最後の冬が来た。ぶわりと膨らんで身を寄せる鳩の姿を見ながら、寒さに独り身を震わせた。


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