工業高校の怪談

「アサヒ!」

叫びながら女子更衣室に飛び込んだ。この際男子禁制だとか言ってられない。アサヒの最悪の姿も脳裏に掠めながらそこに飛び込んだが、彼女は傷一つなくそこにたっていた。代わりに部屋の真ん中で揉み合うふたり。うちの高校の制服に身を包むふたりの男。ひとりは我らがタケルさん。もうひとりは仮面の男。のっぺらぼうだが、こうも明るい部屋の中では仮面であることが簡単にわかった。

「おまえ、もう、観念しろ!」

タケルさんが馬乗りになって抵抗する男から剥ぎ取った。そこにあった顔におれたち4人は愕然とする。

「せ、先生!」

全員が似たような声を上げた。そいつは生活指導の教師だった。いい歳して学生服に身を包み伸びている姿は酷く滑稽だ。

「アサヒ、なにがあったんだ」
「様子見に来たら、この人が後から入ってきて・・・正体を暴こうとして揉み合いになってたらタケルさんが助けてくれたの・・・」
「タケルは、なんでこんなとこに」

顔を赤くしたり青くしたり忙しいアサヒの言葉を遮って訝しげな顔のタカシが遮った。するとタケルさんは少しきょとんとしたら顔で当たり前のように言う。

「おれも同じ学年の女から泥棒の話は聞いていたし、お前がアサヒさんと協力して幽霊騒動との合同調査を調べてるって言ったろ。彼女は少し勇猛果敢なところあるしいざ本当に泥棒と対峙したら真っ向から捕まえようとするんじゃないかって心配で。ボクシング部外のやつに幽霊騒動があったらすぐ連絡するように伝えておいてそれを聞いてからここに飛んできた、間に合ってよかった」

そしてタケルさんが馬乗りになって教師を押さえつけながらアサヒに微笑んだ。アサヒはもうゆで蛸のように真っ赤になってご心配おかけしてすみませんと消え入りそうな声で言っておれの背中に隠れた。
好きな男の口から勇猛果敢だなんて言われちゃったらそりゃあ恥ずかしいだろうな。裏を返せば獰猛で猪突猛進ってことだ。
しかし恥ずかしがるアサヒを他所にタケルさんは無邪気に話を続ける。

「それで、次は先生の番だ」


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