工業高校の怪談

そんな作戦会議から数日が経ったある日の放課後、タカシと合流して夕暮れの校舎をうろうろと歩き回ったりだべったりして時間を潰す。ここ数日の調査はずっと空振りだった。流石のおれたちも少しいらいらしている。本当はゲームセンターだとかに行って遊びたい年頃なのだ。いつまでも学校なんかに残っていたくない。
しかしそれにしても、幽霊騒動が巻き起こってから校内で無意味に時間を潰す生徒は減った気がする。昼間クラスメイトに聞き込みをした話では、幽霊をみると成績が下がるだとか闇討ちに会うだとか、パチンコで大負けするだとか酷い尾ひれがついて広がっているようだった。しょうもない。
しかしタカシの願いは叶えるためなんとかして早く解決しないとな。そう頭を捻っていると教室のドアががらりと開いて教師の中野がひょっこりと顔を出した。

「安藤、真島、やっぱり今日もお前ら残ってたな。ダラダラしてんなら荷物運ぶの手伝えや」

うわと小さな声でタカシが言った。面倒くさいことに巻き込まれたな。
なにか言い訳を考えようとしたが、おれもタカシも全くの考えなし。渋々と机の上から降りて中野の後ろに続いた。

「手伝い終わったら、お前たちもさっさと帰って勉強しろよ。最近校内が物騒みたいだからな」
「そういえば最近出てる幽霊のことっすか、昔からうちの学校にいたんですかね」
「いや、お前たちが入学してしばらくしてぐらいからだ。悪質ないたずらだろう、まさかお前たちじゃないだろうな」

中野にぎろりと睨まれてぶんぶんと首を振る。むしろおれたちは原因究明に勤しんでいる方。
その時だった、今度は野太い男の悲鳴が聞こえてきた。恐らくすぐ側にある階段の上の方から。おれとタカシは頷き合うと階段に向かって走り出した。今度こそは逃がさない。背後で中野がなにやら言っていたが気にしなかった。
1段飛ばしで階段をかけ上ると文化部っぽい線の細い男が腰を抜かしていた。あまり見かけない顔なのでたぶん先輩だろう。とりあえず敬語で話しかける。

「大丈夫ですか!」

そして駆け寄ると顔面蒼白の男が目の前の教室の中を指さした。そこには血みどろの猫の死体が転がっている。ぞっとする。タカシも口元を抑えて顔を顰めた。
この男の悲鳴を聞きつけたのか、ぱらぱらと校内に残っていた生徒や教師たちが集まってきて教室の中を覗き込みそれぞれの反応をする。そして教師の中のひとりがおれたちに向かって言った。

「校内に不審者がいるかもしれない、お前たちは帰りなさい。なるべくまとまって、今日は家で大人しくするように」

幽霊騒動がこんなことになるなんて。そこではっと思い出し携帯電話を抜くと相原 旭の名前を呼び出してコールした。待ち構えていたかのようにすぐに彼女が応答する。

「アサヒ!今どこにいる、こっちで・・・」
「幽霊出たでしょ、こっちでも話聞きつけた人がいてあっという間にみんなそっち向かってるよ。わたしは作戦通り陸上部の女子更衣室の傍で待機してる・・・」
「それが幽霊なんかじゃなかったんだ、猫が殺されてる。いつもと違うやつが入り込んでるかもしれないからお前もとりあえずさっさとこっちまで来い!」
「え、あ、うん・・・きゃあ!」

しかしそこまで説明したところでアサヒが短い悲鳴を上げて携帯を取り落としたかのような音がして声が遠のいた。何があった。おれは人の輪を押しのけて外に出ようとする。タカシも後を着いてきて走り出した。

「どうした!」
「アサヒに何かあったみたいだ!悲鳴と、なにか揉み合ってるような物音」

携帯に耳を押し付けるとがさがさと喧嘩の音のようなものがスピーカーの奥から聞こえる。ここから少しだけ離れた場所へと走った。


/
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -