連日の雨にうんざりしていた。窓ガラスに不規則な水玉模様を描く雨粒にため息をつく。

ムーミン谷はここ1週間ぐずついた天気が続いていた。せっかく冬眠から目覚めたムーミンたちも、雨のせいでぶり返した寒さに本能が冬眠へ戻ろう告げているのかのかうとうとしていることが多い。

「・・・ねえ、ムーミンママ」

だからレディがなにげなく横にいたムーミンママにそう話しかけても返事は帰ってこなかった。そちらを振り向いて様子を伺うと椅子に腰かけた彼女は編み物をしながらこっくりこっくりと船を漕いでいる。
レディは仕方なく近くのソファーにかけてあったブランケットを持ってくるとムーミンママにかけてあげた。

先ほどまで一緒に遊んでいたムーミンとミイも昼寝がしたいと2階へ行ってしまったし、今朝は小説を書くと意気込んでいたムーミンパパもこの分では書斎で原稿を枕に夢の世界へ旅立っているだろう。つまりレディは、暇を持て余していた。

無意味に室内をうろうろ歩いてどうしようかと思案する。今晩はムーミン一家に夕飯を誘われているので勝手に帰ってしまうのもどうかと思った。
そしてどうしようもなくなった暁にポケットに手を入れると、中から白いハンカチが1枚でてきた。それを見て、生まれ育った国に遠い昔から伝わるおまじないをひとつ思い出す。ムーミンママの裁縫箱から綿とリボンをほんの少しだけ拝借するとハンカチの中に詰めてリボンで縛った。そしてペンでハンカチに顔をかくと窓辺に吊るす。

「あーした天気になあれ」

そしてそう呟いた。のんきな笑顔を浮かべたてるてる坊主はのんきに揺れている。レディはそれを見てひとつ大きな欠伸をした。そして窓辺のソファに座ると彼女もゆっくりと眠ることにして静かに目を瞑る。
夕方、雲の切れ間から差し込む夕陽がその顔を照らし眩しさに目を覚ますまで、彼女は惰眠を貪ったのだった。

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