「ボク、半田より大きくなったら半田にキスしてあげる」
「意味わかんね」
わからなくて当然だった。何せ松野は主旨を伝えていないからである。松野は自分の身長を気にしていた、ましてや今好きである半田より小さいのがなによりも気に食わなかった。しかし半田は知らない。松野が自分に想いを寄せていることも自分よりも大きくなりたいということを。
「松野はそのままじゃないと松野って感じしないなあ」
半田は、松野が自分より小さいことに不満なかった。寧ろ、松野よりも小さい自分を想像する力はなかった。想像力に欠けていると半田はよく言われたが普段の授業ボーっといろいろなことを考えている自分は自称・想像力の豊かな少年だが、こればかりはどうも無理だった。だから、少し笑って松野に言ってやると、それが気に障ったのか機嫌を悪くする。松野はあまり感情を外には出さなく、表情だけでは読み取りにくいが長年一緒にいる所為か半田には松野が今不機嫌だということが分かった。
「じゃあ半田はどうしたらキスしてくれるの?」
「何なの?そもそもお前はキスがしたかったの?」
「うん」
「なら、女の子紹介してあげるから、ほれ」
そう言って懐から、お世辞でなくともかわいいと言える女の子の写真を取り出す。松野の機嫌が最高潮に達した。眉間にしわを寄せる彼を見るのは半田も初めてなので、ぎょっとして写真を直そうとするとその手を掴まれる。
「半田、好きだよ」
「……は?」
そう言ってむやみに自分の唇に押し当てられたのが彼・松野の唇だと理解するのには少々時間がかかった。唇を離されてようやく状況を理解した半田の顔はリンゴのように真っ赤だった。
「かっこ悪いでしょ。ボク、半田にキスするとき、少しだけ背伸びしなくちゃいけないんだよ」
「うん…」
「だから、ボクが半田より大きくなったらキスしてあげるよ」
それでも半田には今の松野でいてほしかった。それでも十分かっこよかったからである。火照った顔を煽ぎなが、もうキスしたじゃん、半田はそう思いながらすっかり機嫌がよくなった松野を見た。

110727 松半
大きくなりたい少年
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