誰にも言わなかった。他人なんかに絶対に壊されたくない。恋人ではない。なれない。


「…カカシ先生!!」

後ろから走って大声を挙げた。先ほど受け取ったばかりの卒業証書を片手でぶんぶんと振ればこちらを見てはははと落ち着いた笑みを溢す彼は立派な社会人カカシ先生。廊下を走る私はまだまだ子供。

「卒業おめでとう。」
「ありがとうございます」
「早くいい女になるんだよ」

ぽんぽんと叩かれた頭からじんわりと先生の優しさが染みるけどいい女とはいったいいくつの女性を指すのだろうと考えるとどうしようもなくやりきれない気持ちになった。

「もう、そうやって子供扱いしないでよ」
「…なんか信じらんないね。お前も明日から学生じゃないのか。」

撫でる手の平が頭から離れて思わず声が漏れる。やめないでって、こんな時だけ生徒ぶる私はなんて都合がいいんだろう。


「…時々、学校遊びにくるから」
「そうだね。おいでよ」



私がもっと大人になって堂々と先生を口説けるくらいの女になったらまたここに来よう。それまでこの気持ちはそっと胸に秘めて置こう。

それからの十何年、色々あった。当時先生への想いを周囲から誤魔化すために彼氏をつくっていたが卒業と同時に自然消滅してしまった。それからも私はなんとなく彼氏をつくり続けて、どうしようもない男とくだらない恋愛をしたこともあったし紳士的で誠実な男性とちょっといい恋愛をしたこともあった。その度にわたしの中でどんどん先生は薄くなりなんだかどうでもいい存在になっていった。いつしか先生は透明になった。



「わあ、久しぶりー。私たちももう若くないわね」
「今日のこと、一週間前から楽しみにしてたのよ」

同窓会が開かれて懐かしい顔ぶれが揃う。幹事はいつも積極的だったリーダー的存在の男子数人。あんなに派手な髪色だった女子達もすっかり落ち着いて母親顔の者もいたし、興味のなかったブランド物で身を包んでいる者もいた。

時は人を変えるし、人も時を変える。

そこでふと気付く。

「ねえ私って、カカシ先生のこと好きだったよね」
「そんなの初耳だけど?」

それって冗談?周りの友達がクスクス笑う。わからないので、とりあえずその場は冗談にしといた。


20110612  ぱちこ









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