あの子を追いかけて | ナノ
セーラー服という肩がはるような服装でも彼女の体躯は細いまま。
不健康そうな肌色に切れ長の黒い瞳。醸し出す雰囲気は冷徹そのもので誰も近寄らせない。ただ、一度関わってみると彼女のおもしろさというか人とは少し違った面が見えてそこそこ友達はいるようだ。
それでも彼女は誰かとつるむということをしなくて、いつも一人で廊下を歩いていた。
そこに僕はいつも声をかける。
「暇ですね」
「君もね」
肩を叩けば、不愉快そうな彼女がこちらを覗いた。
僕の言葉が気に食わなかったのか(僕が話しかけた時点で気に食わないだろうけれど)、彼女は一度止まった足をもう一度動かし始めた。
それに僕は着いて行く。
「私はこれから図書館に行くんです」
「着いて行こう」
「やめてください。不愉快です」
「知ってる」
「嫌がらせですか」
そうだね、と僕が返せばますます彼女は眉間の皺をよせた。
僕は女の子が大好きだ。どんな容姿でも偏屈な性格でも愛でる自信があった。けれどそれは彼女によって覆された。
一言で言えば気に食わない。どんな女の子にも甘い言葉をかけることができるのに、彼女に対してだけは違う。
良い言葉なんて思い浮ばないし、口から飛び出る言葉は粗雑なものばかりだ。
彼女もそう。普段話している時は冷静さばかりが浮いているのに僕と話している時だけは何処か荒らしい。
「どうせ一人でしょ」
「いつも誰かといる人にとって私は不思議に写るのでしょうね。生憎、私は貴方と違いますから」
こちらに視線も寄こさないで彼女はつらつらと言葉を並べた。
何だ見られていたのか。クラスも違うし、彼女は 僕に興味なんてないと思っていたから見られているなんて思わなかった。
彼女の言葉通り、僕は誰かと一緒にいることが多い。主に女の子だけど。
「僕に興味あ……」
「ありません」
言葉は遮られた。きっぱりと、それはもうはっきりとした口調で。
彼女は変わらず歩いているし、僕も着いて行っている。他の人から見れば僕らはどう写っているのだろうか。
罵倒の言葉を並べながら、肩を並べている。おかしなことだ。
「嫌い嫌いも好きのうちって言うけど、僕はお前が嫌いだね」
「奇遇ですね。私も貴方が嫌いです」
そこでやっと彼女は僕の顔を見た。
相当、嫌われているようだ。
終
セーラー服って肩幅あるように見えますよね。