FATE | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

たわむれ話し
男子会編


(幕間前の話し)

「チキチキ、天草の恋愛事情〜!」
「いきなり始まりましたね」

向かいの席にいる天草が苦笑いしながらも逃げずにいてくれるので、了承したと思いそのまま続行する。

天草が普段何考えているのか、俺には分からない。
そういうサーヴァントはたくさんいるが、天草の場合は意図して隠しているから余計に見えなくて。普段一緒に戦ってる割に何も知らないのはよくないよなーと思い悩んでいたところ、食堂で珍しく一人で過ごしている天草を見つけて飛びついて、冒頭に至る。

「それで、何をお聞きしたいんですかマスター?」と、読んでいた本を閉じる。天草はなまえさんのサーヴァントなのに、俺をマスターと呼ぶ。なまえさんの代わりに俺が天草を連れて行っているので、仮とはいえマスター扱いらしく。前にチラリと、なまえさんとは主従関係でいたくないからだと、話していたのを覚えてる。

「なまえさんと天草ってどっちから告白したのっ?」
「さぁ…どちらだったか。ずいぶん前の話しですしね」
「え、プロポーズも?」
「それは私からですね。…といっても、私はお付き合いすると決めた時点でそのつもりだったので、きちんとお伝えして伝わったのは後のことでしたが」
「へええ…」
「私もなまえさんも、ストレートに口にする性分ではないのでなかなか……毎回勇気が入ります」

普段レイシフトで一緒にいても自分のことに関しては控えめにしている天草の口から、こうぽんぽん話しがすぐ出てくるとは思わなかったので、なまえさんのことだと本当に饒舌に語るくらい好きなんだなぁ、と心なしかはにかんで話す天草を見て思う。

「天草が聖杯にかける願いは秘密って言ってたけど、それってなまえさんのことも入ってるの?」

途端、天草が息を呑んだ。

俺が天草のことで一番知りたいと思っていたことは、天草自身がなまえさんとどうあっていきたいのか。

天草は、人類すべての救済を望んでる。これも前にチラリと話していた。きっとそれがずっと抱えてる聖杯への望みなんだろうけど、そこになまえさんとの話しが織り込んであるのかは聞いたことがない。
俺もなまえさんも、人間だ。対して天草は英霊で例え互いを想っていてもそこから先はない。それは2人とも最初から分かっていると思う。でも俺は、出来ることなら2人にはずっと幸せでいてほしい。俺だけじゃない。マシュやドクターやダヴィンチちゃん。みんな願ってる。

「なかなか、鋭いご指摘ですね」
「天草って秘密主義だけど、なまえさん絡みなら吐いてくれると思って」
「マスターのそういう真っ直ぐなところ、些か苦手です」

それは知ってるよ。
でも嫌な顔をせず、ううん…と悩んでくれる天草は根本的にいい人だなと思う。

「そうですね。…個人的な願いはまだ伏せますが、最近、もう一つ願いが出来まして」
「ふむ」
「私自身の願いを叶えたら、その後1人の人間になりたいのです」

首をかしげる俺に、天草は柔和な微笑みを浮かべて続ける。

「受肉し、歴史上の聖人ではなく。ただの天草四郎になって。なまえさんと生きたいのです」

「…そっか。いいな、それ」

過去の後悔や未練で聖杯に願いを掲げる英霊たちの中で、天草の願いだけはなまえさんと生きたいから、という。聞いているこっちが恥ずかしくなる願いに、俺もつられて笑う。

けど天草は照れ臭そうに苦笑し「なまえさんが心変わりしなければ、の話しですが」とおどけてみせるので、「いや、それはない」と断言しておく。

「俺から見てもなまえさん、天草にベタ惚れだし」
「ははは…こしょばゆいですね」
「それはこっちのセリフ。天草の話しするとすぐ目輝かせるし、レイシフト先で何かあったらすぐ来ようとするし、近所の尊敬するお姉さんがふいに見せた知らない顔って感じで少々複雑な気持ちになりマス」
「横取りはいけませんよ」
「大丈夫、そういうんじゃないから」

天草より知り合うのは遅いかもしれないが、あの包容力と優しさに姉のように慕っている身としては、祝福すると同時に、少しの寂しさを感じずにはいられない。
そこには家族としての情しかないから、どっちかと言うと恋に等しい思いを抱いているのはマシュだし。

けど天草はほんの少し不機嫌そうな目をするので、いやほんと。なまえさんのことになると人間らしい顔をするんだなぁ、と嬉しい気持ちになる。


「ホント天草って、なまえさんのことめっちゃ好きだよな」
「ええ、愛しておりますよ」
「うわなにがストレートに言えないだよめちゃめちゃ言うじゃん…。いいなぁー…俺もマシュとそういう仲になりたい…」
「なれますよ。マスターとマシュさんはとてもお似合いですから」
「わーい、接待サンキュー」


これは本当のことなんですがねぇ、と笑って言ってくれる天草のこと、ちょっと知ることが出来た気がしたので、やっぱり話し掛けてよかった。


「ところで、初えっちってやっぱ緊張する?」
「その話しは、マスターのお部屋でしましょうか」