『何かあったらいつでも帰っておいで』

あの人のそんな言葉を胸に里を出てもうすぐ一年。この隠密任務はやはり精神的な苦痛を伴うものだった。それでも私がやり遂げられたのは、他でもないあの人のそんな言葉のおかげ。

「ただいま、カカシさん」

彼の胸に飛び込む。ああ、ここが私の帰る場所だ。









『いってきます、カカシさん』

凛とした表情で背中を向ける彼女を、手を伸ばしてその身を掻っ攫いそうになった。帰っておいで、なんてただの保険だった。一年という長い年月がどれだけ俺を不安にさせたか。

「おかえり、」

その身を抱きとめて改めて思った。やっと帰ってきたんだ、俺たちの家に。









「おかえり、」

そう言って私を抱きしめてくれる彼の背中が少し震えている気がする。あの任務に出る私を彼がいかに心配してくれていたのかがひしひしと感じた。
温かい、誰しもを包み込むような彼のちょっぴり弱いところにくすりと笑い、いつか言った言葉をもう一度。

「大好きだよ、カカシさん」









腕の中のクスッとした笑い声。今笑ったでしょ。そう言おうと口を開くより早くに告げられた言葉。
その言葉に視線を下げた。絡み合うソレに、やられた、と顔に熱が溜まるのを抑えられず、悔しくなったから、

「足りないよ、もう一回」

そう言って彼女の口を自身ので塞いだ。彼女はまた笑ったけどね。









「もう一回」

何度目か聞く彼の照れたような悔しがるような、そんな声が聞こえてきて笑えば一年ぶりに感じる唇の感覚。
なんだか懐かしくて、嬉しくて、幸せな気持ちでいっぱいなのに私の頬を伝う涙。離れた名残惜しさよりも頬を拭ってくれる彼の優しい指が嬉しい。
一年前よりもまた、好きになった。









細められた瞳から溢れ落ちる宝石みたいな涙。それがあまりにも綺麗で、地面に落ちるのがもったいないと感じるほど。

「先に、カカシさんが言って、」

儚げに涙を含んだ声で言葉を紡がれる。参ったな、女の涙には敵いそうにない。
お望み通り、と笑みを浮かべ、彼女の耳元で囁いた。「愛してる」と。




ノスタルジアハイライト


「足りないです、もう一回。」



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