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「ナルト、嬉しそうだね」
「あぁ」
「よかったよ、本当に、」


「よかった」
そう言いながら俺にもたれかかってきたユウナ。
その体を支えるために腕を回すと、生温い感触が伝わってきて。恐る恐るユウナの忍服を見るとそこにはべっとりと血が付いていた。


「…ユウナ?」
「…」
「っユウナ!」


顔をぺちぺちと叩いても無反応なユウナに血の気が引いていって。
その体を抱えて急いで走って、シズネのいる仮設のテントに飛び込んだ。


「シズネ!!」
「!…ユウナさん!?」
「すぐ診てやってくれ、こいつ大怪我してるんだ!」
「わかりました、そこに寝かせてください!」


ぐたりと横になったユウナの腹部をシズネのチャクラが覆う。
その隣にはいつもと姿が違う綱手様が眠っていて。


「シズネ、綱手様は…?」
「…命に別状はありません。里の人たち全員にカツユ様をつけて治療なさっていたそうです。相当な無茶をされたんでしょう。なのでしばらく目は覚めないと思います」
「…そうか」
「おそらくユウナさんも同じだと思います。カツユ様とサクラから、ユウナさんが綱手様に代わって治療をしていたと聞きました。自分のことより他の人のことを考える…そんなところがこの二人はそっくりですから」
「…あぁ、そうだな」


シズネの治療によってさっきよりだいぶん顔色が良くなった様子のユウナにほっ、と肩を撫で下ろす。
まったく冷や冷やさせないでくれよ。これじゃあ命がいくつあっても足りないよ。


「!…この印、」
「どうかしたか?」
「…ユウナさんの額にも、綱手様と同じ百豪の印があるんです」


百豪?一体なんなんだ?


「百豪の術といって、常時額にチャクラを貯めることができる術があるんです。非常時にはその貯めた膨大なチャクラを使って負傷者に治療をしたりするんですけど、」
「…それで?」
「…この印が出るほどチャクラを貯めるには少なくとも三年はかかります。その間は何をしてる時もずっと一定量のチャクラを送り続けなければならないので、私には出来ませんでした。それに、ユウナさんは元々普通の忍に比べてチャクラ量が多いんです。百豪で貯めたチャクラとユウナさんが持っているチャクラを合わせれば恐らく、ナルトくんとまではいかないものの相当な量になるはずです」
「!」
「…それを全部出し切ってでも、ユウナさんはみんなのことを守りたかったんでしょうね」


「やっぱりユウナさんは遠いです」
切なく聞こえる声に反して、シズネはユウナを誇るような嬉しそうな表情で見ていた。

ユウナ、お前は本当に不思議な奴だよ。みんながみんな、お前のことが大切になってる。お前のことを真剣に想ってる。同じ師を持つシズネやサクラだけじゃなくてね。お前はそういう魅力と不思議な力を持ってるよ。


「これで傷は塞ぎました、もう大丈夫だと思います。ただ、目が覚めるのには時間がかかるかと」
「…そうか。ありがとう、助かったよ」


綱手様と並んで布団に横になるユウナの隣に腰を下ろす。顔にかかった髪をゆっくりと横に流すと、ちょっとだけ口角が上がった気がした。

まったく呑気なもんだよお前は。俺の気持ちもちょっとは考えてよね。


「カカシ!」
「!アスマ」
「ユウナ、どうしたんだよ」
「あぁ、相当な無茶したんだろうね。しばらくは目を覚まさないだろうって」
「ハァ…やっぱりかよ。ま、生きてりゃなんでもいいけどよ」
「そうだな」
「久しぶりね、カカシ」
「!紅、」


ユウナが無事だと聞いて安心した様子のアスマの後ろからひょこっと顔を覗かせたのは久しぶりに見る紅で。いつの間にかずいぶん大きくなったお腹を抱えて俺の向かいによいしょと腰を下ろす。


「…ずいぶん痩せたわね、ユウナ」
「…あぁ。こいつの三年間の心労を考えると居た堪れないよ」
「でも、帰ってきたのね」
「…そうさ。帰ってきたんだ、やっと」


優しい顔つきで眠るユウナの頭を撫でる紅。そんな紅の隣に腰を下ろしたアスマは感慨深げな顔をしてて。


「また、こうしてみんなで話せるとはなァ」
「ふふ、そうね。なんだかくすぐったいわ」
「違いねぇな。けど、やっぱ嬉しいんだよな俺」
「…センチなアスマ、ちょっと気持ち悪いよ」
「…うるせー」


ユウナを囲むように、久しぶりのあったかい空気がその場を流れる。

やっと、やっと戻ってきたんだよ。
こんな温かい時間も、ユウナ…お前も。




かみしめる、この時間




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