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「みんなのために掟を破った父さんを、」
「…」
「今は誇りに思う」
「!」


チョウジに向かった攻撃を神威で飛ばした後、俺の命はやはり尽きたようだ。
暗がりの中を歩いていると見えた炎の明かりに近づけば、そこには二十数年ぶりに見る父さんの姿があって。俺の話を聞きたいとそう言われてほころぶ頬をそのままに隣に腰を下ろした。

父さんに話すために振り返ってみると、ずいぶんあっけない人生だったと思う。
大切な仲間や師、想い人まで守れないで助けられないで俺は死んだ。結局、後悔ばかりの人生だった気がする。

昔、掟を破って仲間を助けてそのせいで自ら命を絶った父さんを心のどこかで恥ずかしく思ってた俺がいた。でもそれは違うと、白い牙は英雄だとオビトが言ってくれたその言葉に救われた。

リンの気持ちにも気づいてた。でも俺はユウナのことも大切だったしオビトの気持ちももちろん知ってた、だからわざと気づいてないフリをした。挙句俺が殺した。

ユウナのことも助けると言いながら俺は助けることができなかった。あいつがやっと助けてと俺に縋ったっていうのに。あいつの数少ない願いさえ聞いてやれなかった。なんて無力な人間なんだ俺は。


そんなどうしようもない俺だけどこの歳になってみて、いろんなことを経験してやっとわかった。父さんがしたことは間違ってなんかなかった。正しかった。忍として当たり前のことだった、と。


やっと会えた父さんにその気持ちを素直に伝えると、「ありがとう」という小さい声が聞こえた。

やっぱり父さん、あなたは俺の誇りです。
俺にとっても里にとっても、あなたは紛れもない英雄です。

俺も、父さんみたいな偉大な忍になりたかった。



「!…これは、」


そんなことを思った途端、俺の体に一本の光が突き刺さった。だけど痛みはない。むしろどこか安心するような、そんな不思議な感覚。


「どうやらお前はまだここに来るには早すぎたようだな。お前にはまだやるべきことがあるはずだ」
「…父さん、」
「お前と話せてよかった。俺を許してくれてありがとう」
「…」
「…ユウナちゃんのこと、頼んだぞ」
「!」
「俺はユウナちゃんの家族を救うことができなかった、情けない話だ。でもカカシ、お前にとってユウナちゃんは誰よりも大切な人なんだろう?なら、お前がしっかり守ってあげなさい。それはお前の役目だ」
「っ父さん…」
「…これで安心していける」


どんどんと光に飲まれていく体に、ついに目の前が真っ白になった。
でも最後に聞こえた、「母さんにやっと会えるよ」という父さんの幸せそうな声で不思議と全てが報われた気がした。


「…っ!」
「!カカシ!お前もか!」


意識が覚醒してばっ、と起き上がるとそこには驚いたような嬉しいような不思議な顔をしたチョウジとチョウザさんがいて。


「よかった!よかったよ、カカシ先生!」
「…あれ、なんで…」
「ナルトのやつのおかげだ。あいつがペインを説得して、そのペインがこの騒ぎで亡くなった人たちに転生術をかけたらしい」
「…そうでしたか。ナルトが、」


あいつに助けてもらったってことか。
ったく、やっぱり不思議なやつだよお前も。暁のリーダーまで説得するなんてな。

ありがとう、ナルト。
お前のおかげでまたこうして生きていられるよ。


「カカシ!!」
「!」


突然耳に飛び込んできた声に体が固まった。
ぎぎぎ、と音を立てるように振り返ると、ゼェゼェと息をしながら俺を見つめるぼろぼろのユウナがいて。

なんで、お前いつ帰って来たの。
そう思っていると途端に体に走った衝撃。気付けばユウナが俺に飛びついていた。


「このバカ!なんで…なんでこんな無茶すんの!」
「…ごめん、」
「本当にもう会えないと思ったんだからっ!」
「…悪かった」
「…よかった、ぁ…生きててくれて…」
「…うん、」


怒鳴ったかと思えば震える声で俺が生きててよかったというユウナ。久しぶりのその感覚にちゃんと生き返ったんだと安心できた俺がいて。気づけばユウナの背中に腕を回していた。


「…カカシ」
「ん?」
「……ただいま」


俺の肩に顔を埋めたままぽつりとそう呟くユウナ。
実感したいんだろう、本当に帰って来たって。

やっと、やっとだね。
お前にしてみればとてつもなく長い3年間だっただろう。里と綱手様を守るためとはいえ相当な覚悟だ。誰にも言えず、ひとり孤独に打ちひしがれたときもあったはず。

でも本当にやっと、やっと帰って来たんだよ。木ノ葉隠れの里に。お前の故郷に。
もう安心していいんだよ。もうひとりで抱え込むようなこともしなくていい。そう伝わるようにより力を入れてぎゅっと抱きしめた。


「おかえり、ユウナ」




ずっと言いたかった




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