04




「へぇ。あのシカマルがねぇ」


なんてにたにた笑ういのちゃんに苦笑いを浮かべる。

あれから三年が経って、去年先輩と結婚して“奈良”になった私。
目の前にいるいのちゃんも去年サイさんと結婚して、今お腹には赤ちゃんがいる。


「そんなドラマチックなことがあったなんてねぇ」
「これドラマチックっていうの」
「そうじゃない!まぁ、私があんたたち引き合わせてあげたんだから感謝しなさいよね」
「へいへい。ありがとうごぜぇます」
「思ってないでしょこのバカ!」
「いったい!」


思い切り頭をスパンと叩かれて涙目でいのちゃんを見れば、他人のことだってのにこれでもかと幸せそうな顔してるからやっぱり優しいなぁなんて思うわけで。

そういえば、あのあと先輩に「先輩に追いついてから告白したかったのに」って言ったら呆れたようにため息つかれて、「これからは追いつくんじゃなくて横にいりゃあいいだろうが」って言われてきゅんとしたっけ。

こんな昔の話を思い出したのはいのちゃんが家にズカズカとやってきて、「そういえばあんたたちの馴れ初め聞いてない!!」ってぎゃんぎゃん騒いで暴れたからで。
たぶん妊娠してるから任務行けないし暇なんだろうなぁなんて思って付き合ってるわけで。

まぁ、かくいう私もそうなんだけど。


「それで?あんたのところ、予定日いつなのよ」
「再来月?かな」
「あんたとシカマルの子供ねぇ。どんな子になるのかしら」
「そりゃ先輩に似て優秀な子に決まってるじゃん」
「私はあんたに似てバカになりそうな気がするけどね」
「なにそれひどい」


子供の頃からずっと変わらないいのちゃんとの関係。
先輩とも私とも幼なじみで、どっちのことも理解してくれてるありがたい存在。こっぱずかしくて今さら口に出しては言えないけど、ありがとういのちゃん。

そんなこと考えてたら玄関が開く音がして「たでーま」って帰ってきたのは愛しの旦那さん。
その声が聞こえるなりいのちゃんがまたにたにたして「帰ってきたわよ、愛しの旦那さん」って言うもんだから、思わずため息をつきながらも口元が緩むのは仕方ない。


「おかえり、マリナの愛しの旦那さん」
「…んだよそれ」
「照れちゃってまったく」
「おかえりなさい、先輩」
「おう。今日はおとなしくしてたかよ」
「この通り」
「ハァ…あんたの過保護っぷりホント呆れるわ」
「…うるせぇ」


照れたように頭をかく先輩にいのちゃんと顔を見合わせて笑った。
するとチャイムの音がした。出ようと立ち上がると先輩が「俺が行く。お前座ってろ」って言うもんだから言う通りにしたら、玄関から「おいいの、サイ迎えに来てんぞ」って声がしてどこの旦那も過保護だななんてまた笑った。


いのちゃんが帰って夕飯も食べてお風呂も入って二人でまったりと過ごす時間。

最近先輩は六代目の書類仕事をよく手伝ってるし任務も日帰りのやつばっかりだからほとんど定時に帰ってくる。妊娠してる今は任務に出れないから遠方で長期の任務は正直不安で、先輩も六代目もそれをわかってくれてるからありがたい。

そんなこと考えてたら隣に座る先輩の手がふと私のお腹に触れた。どうした、なんて思ってるといつものしかめっ面とは真逆の、私の大好きな優しい顔をしてて。


「また腹でかくなったか?」
「毎日見てるでしょ」
「ま、あな。でもよ、やっぱりでかくなった」
「そりゃ赤ちゃんいるからねぇ」
「…だな」


私のお腹に耳を当てて真剣な顔をする先輩。やっぱり賢いらしく、その先輩の耳に当たるようにお腹を蹴る赤ちゃん。その衝撃に飛び上がった先輩はとても嬉しそうな顔をしてて。


「蹴りやがったぜこのクソガキ」
「そうだねぇ」
「ったく、生意気なガキだっつの」


口は悪いけど顔の緩み抑えきれてないよ先輩なんて言葉を飲み込んだ。
だって私の顔もゆるゆるだから。こんな幸せな時間がいつまでも続けばいいな、なんて思った。


「お前、そろそろ寝ろ」
「え、まだ眠たくない」
「体冷やしちゃまずいだろ。じゃあ寝なくていいからベッド入ってろ」
「…」


もうちょっと先輩と過ごしたいのになぁなんて思ってムッとしたら困ったように頭を撫でてくれる先輩。


「俺も一緒に行くからよ、な?」
「…うん」


先輩と過ごせるならなんでもいいや。そうして二人でベッドに入ったら、あっという間に寝ちゃった先輩。

やっぱり疲れてんだなぁ、六代目も人使いってか先輩使い荒いからなぁなんて苦笑いにもなる。そして私のお腹に腕を回してすやすや寝息を立てる先輩の頭を撫でながら幸せだなぁなんて感じる。


この子が生まれたら私たちの昔話をいっぱい聞かせよう。「あんたが生まれて母ちゃんはホントに幸せだよ」って目一杯抱きしめよう。

大好きな人と結婚できてその人との子供が産める私は本当に幸せ者だから。そんで生まれてくるのは、きっと先輩にそっくりなめんどくさがり屋の男の子だから。名前は、そうだなぁ…。


そんな幸せいっぱいなことを考えてたら襲ってきた眠気。
先輩の背に腕を回しながらゆっくりと目を閉じた。



――あの日、追いつきたかった背中は今、私の隣にいる。

私は最高に幸せです。





fin.
BACK |

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -