あれから2日経ち、ちょくちょくマリナの様子は見に行ってたが、今日は任務が立て込んでて夕方まで来られなかった。早くあいつの顔が見てぇ。そう思って急いでいると、やけに病室が騒がしい気がして扉の近くで足を止めた。


「…よかった」
「…ここは、天国?」
「何バカなこと言ってんの!木ノ葉病院よ!」
「…びょ、いん?」


この声はサクラと、掠れたマリナの声だ。
たかだか1週間ぶりだっつーのにあの声を聞いただけでなんだか目頭が熱くなる。相変わらずバカなこと言ってやがる。何が天国だバカ。


「気分はどう?あんた、1週間も意識が戻らなかったのよ。シカマルが急いで連れて帰ってこなかったらどうなってたか」
「…せん、ぱいが?」
「そうよ。シカマルがあんた抱えて血相変えて飛び込んできたの。あと一歩遅かったら、あんたホントにおばけになってたわよ。シカマルに感謝しなさいよね」



そう言って呆れたようなサクラの声に、俺の足は自然と動いた。


「目ぇ、覚めたのかよ」
「…先輩、」


病室の扉にもたれかかる俺を見たマリナは驚いたような顔をして起きようとするが、傷口が痛むらしく顔を顰めサクラに咎められた。


「安静にしてなきゃダメよ!傷はまだ塞がってないんだから」
「…でも、」


そう言って俺を見つめるマリナにため息をついて、サクラに2人にしてくれと頼んだ。サクラはマリナをベッドに寝かせると、静かに去る。扉がパタンと音を立てて閉まると同時に、また俺はため息をつき定位置の椅子に腰掛けた。


「…ったく、無茶しやがってこのバカ」
「…すんません」
「あとちょっと遅かったらマジで危なかったんだぜ」
「…」


俺がそう言うとマリナはバツの悪そうな顔をして視線を逸らした。そんな姿を見て安心した俺は、ついぽろっと本音をこぼした。


「…んでも、無事でよかった」
「!」


そう言った俺を弾かれるように見たマリナの瞳は今までに見たことないくらいに見開かれていた。


「…それに、言い逃げなんて許さねぇぜ俺は」
「!」


すると息を呑んだマリナの顔が徐々に真っ赤になって固まった。きっと俺に最後に言った言葉を思い出したんだろうな。あの時は意識が途切れる直前だったからよ。

キョロキョロと視線を泳がすマリナを見て、俺はその胸に頭を落とした。そして深くため息をついて、腹を括った。


「…俺もだ」
「…」
「…俺も、マリナが好きだ」
「!」


今度はショートしたみてぇに固まったマリナに少し笑った。


「俺もまだ気持ち伝えてねぇのに言い逃げなんてしてんじゃねぇバカ」
「…」
「この1週間俺がどんだけ心配したと思ってんだバカ」
「…」
「…んでも、」


「マジでよかった」
心の底から安堵の息が漏れた俺に、マリナは「ごめん、先輩。あと、ありがとう」と言った。やっとこいつと話せてることに安心した俺は傷口に触らないようにそっと、んでも離してたまるかと強く抱きしめると、遠慮がちにマリナも俺の背中に腕を回した。

少しの間そうしていると、ふとマリナの最後の言葉を思い出した。こいつは過去形で言った。確かに過去形だった。ゆっくりと体を離すとマリナは不思議そうに俺を見ている。


「…あと、よ」
「?」
「…あれ、過去形…なのかよ」
「??」


なんのこと?とでも言いたげにマリナは俺を見つめる。ちくしょう、このバカわかってねぇな。そう思ってため息をついた。


「…だからよ、その、」
「?」
「…大好きでしたって、過去形なのか?」
「…」


そう言いながら柄にもなく不安になった俺は床を見つめた。
ちくしょう。ほんとに過去形だったら俺くそダセェじゃねぇか。やっと好きだって自覚した途端に振られんのかよ。勘弁しろっつの。そんなふうに思っていると、マリナはぷっと吹き出して。


「…だいすき、です」
「!」
「先輩のこと、好きで好きでたまんない」
「…ッ」


その声にパッとマリナを見ると、今まで見たことないような優しい顔で笑っててよ。してやられたような気分になって、途端に耳が熱くなった俺はまた床を見つめて片手で顔を覆った。


「…それ、すっげぇ殺し文句なんすけど」
「? なにがですか?」
「…自覚なしかよ」
「だからなにが?」


あからさまにムッとした顔をするマリナに笑い、「なんでもねぇよめんどくせぇ」と乱暴に頭を撫でた。さて、言うなら今しかねぇよな。


「マリナ」
「はい」
「…付き合、うか?俺と」
「…喜んで!」


どもっちまって締まらねぇが、マリナが嬉しそうに笑ってるからもうなんでもいい。




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