「…いい加減起きろよ」


あれから5日が経った。
マリナはずっと眠っちまったままで、部屋の中には一定のリズムで機械音が響いている。任務の隙間や時間がある時は、俺はずっとここにいて、マリナが目覚めるのを待っていた。ベッド横のこの椅子が、俺の定位置になっていた。


「なぁ、マリナ」


こうやって何回声をかけても何の反応もねぇ。
もし、もしもこのまま目を覚さなかったら?
一生こいつと話せねぇようになったら?
もしも、こうなって気付いた俺の想いを、伝えられねぇままだったら?

嫌な想像ばっかが頭を巡っちまっていけねぇ。
何度頭を振っても出てくることは最悪なことばっかでよ。疲れてんのかもしれねぇ、あんま寝れねぇしな。んでも、こいつが目覚めた時にそばにいてぇ。あの日のことを謝りてぇ。そんな堂々巡りだった。


「シカマル」
「…チョウジか」


部屋の入り口でチョウジが俺に声をかけた。
そっと来た親友は、俺の隣に腰掛ける。


「あれから、ちゃんと眠れてる?」
「…いや」
「ご飯は食べてる?」
「…食う気がしねぇんだよな」
「シカマルがそんなだと、マリナは心配するんじゃない?」
「…」
「マリナのために、ちゃんとご飯食べて、休んでよ。僕からもお願い。いのも心配してたから」
「…チョウジ」
「僕といのも交代でマリナのそばにいる。何かあったらすぐに呼ぶから。ね?」
「……わかったよ」


確かに、今の俺はひでぇ面だ。
マリナに心配かけちまうなんて本末転倒だよな。「悪ィな、チョウジ」「気にしないで」そう笑う親友に、俺は病室を後にした。


「…シカマル」
「…いのか」


家へと向かって歩いてると、いのと鉢合わせた。
あれからまともに会ってなかったから、気まずそうな顔をしたいの。


「いの」
「…何?」
「悪かった」
「!」


そう言って頭を掻いたら、いのは微かに目を見開いた。


「あの日のこともそうだが、その…心配かけちまって」
「…ホントよ。マリナがあんたのその顔見たら、驚いてまた気絶しちゃうわ」
「…ひでぇな、そりゃ」


そう言って笑ったら、いのは俺をじっと見据えた。


「私も、ごめん。ついカッとなっちゃって」
「いいんだ。仕方ねぇよ」
「…うん」
「さて、ちょっくら帰ってくるわ。お前とチョウジが見ててくれるなら安心だしな」
「しっかり休みなさい。マリナのためよ」
「わーってるよ」


そう言っていのと別れ家路についた。
俺は、いい仲間を持った。




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