04





「マリナ、あそこだ」
「…うん」


アスマたちと全速力で枝を蹴り向かった敵の拠点。近くの木の上に止まり辺りの気配を探ってみても、外には入口の見張りを除いて誰もいなかった。

この奪還作戦の鍵は私が握っている。
火遁と風遁を扱うアスマと、幻術使いの紅。このなかで火遁・天牢に対抗できる術を持っているのは私だけだ。奇襲をかけた後二人には陽動に回ってもらい、私が首謀を叩く。簡単に言えばそんな作戦になっている。

何度目かわからない深呼吸を繰り返した。
私がミスすればこの作戦は水の泡になる。ひとつひとつの動きを慎重かつ確実に遂行しなければならない。私の一挙一動にカカシの命がかかっている。そう思うと手が震えた。

けれど、もう迷わないと決めた。
今私に出来る最大限かつ最上限のことをするんだ。考えろ。カカシを無事に奪還する算段を。カカシを最小限の負傷で救い出す方法を。


「マリナ、カカシは最奥にいるわ」
「…わかった」


索敵してくれた紅の言葉に、目を閉じて最後の深呼吸をした。

時間はない。
今こうしている間にもカカシは天牢によって動きをとめられ拷問まがいなことを受けているかもしれない。いくら百戦錬磨のカカシとはいえ油断は出来ない。少しでも早く、カカシを助けなければ。早く、カカシの顔が見たい。


「……行くよ」
「えぇ」
「あぁ」


「火遁・灰積焼!」
瞬身で向かったアスマの得意忍術が炸裂し、入口の見張りはぱたりと倒れる。けたたましく響いた爆発音に、中にいた奴らの仲間らしい人間が炙り出されたように続々と出て来た。すぐさま奴らには紅の幻術がかけられ、目をとろんとさせてがくりと気絶した。


「ここは私たちに任せて、マリナは早くカカシのところに行きなさい」
「焦ってすっ転ぶんじゃねぇぞ」
「……ありがとう」


ふわりと微笑んでくれた紅と、きっと口端を上げたアスマにお礼を言って、瞬身を使って建物内に潜入した。

背後からはどんとアスマの術が炸裂する音が響き、金属同士が擦れる音も聞こえてきた。まるで巣を攻められ溢れ出てくる蟻のように、奴らはとどまるところを知らない。

けれど、今私がするべきことは、カカシの奪還。あちらのことは二人に任せよう。里の誰よりも私とカカシのことを理解し、信じてくれている二人だ。必ずカカシと、生きて帰る。







「…ここだ」


気配を消しながら急ぐ途中にも溢れてくる敵忍を幾人も始末し、やっとの思いでカカシのいるだろう最奥へと到達した。扉の向こうを探ると、微弱ながら感じるカカシの気配。そしてもうひとつ、そこらの忍とは似て非なるチャクラも感じる。

きっと、この中に主犯がいる。
カカシを捕らえ、勝ち誇っているであろう奴が。私の長年忍として生きてきた勘がそう言っていた。

どくりと脈打つ心臓。
落ち着け、冷静になれ。我を見失うな。大丈夫、アスマも紅もいる。大丈夫。落ち着け、落ち着け。

きつく閉じていた目を開けると、すぐさま印を結んで目の前の扉を破壊した。雷遁が当たった扉は見るも無残に破壊され、バチバチと雷の名残を響かせる。


「カカシを返せ」


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