03





「……は?今、なんと…?」


忍鳥の足に括りつけられていた手紙を広げてすぐさま赴いたのは火影室。五代目火影、綱手様からの緊急招集だった。

開口一番、彼女の口から飛び出してきた言葉に、私と共にやってきたアスマと紅も訝しげに眉を寄せる。まだ受け止めきれない私たちに綱手様はひとつ息を吐き、再び口にした。


「カカシが監禁されている」
「…」
「…そんなに危険度の高いものだったのですか」


まだ口をあんぐりと開け事態を飲み込めない私に変わって、落ち着き払う紅がそう問うた。アスマはいつにも増して真剣な目を向けていて、それが事の重大さを表しているなとまるで他人事のように思った。


「いや、任務自体はBランクだ。中忍二人の初陣の引率を任せた。先程二人は帰還している」
「相手はなんと?」
「…里の機密事項と引き換えだと。さもなくば……ここまで言えばわかるな」
「その機密事項というのは」
「里の中でも重役以上の者しか知り得んものだ、そこらで手に入れられる情報ではない。恐らく二つ名の通ったカカシを餌にせんと情報も入らんと踏んだらしい」
「…なるほど。それで、どうされるおつもりですか」
「上役に次第を話し、返答を待ってはいるが…。恐らくあの人達のことだ、そう簡単に事は運ぶまい」
「……ですが五代目、カカシならそこらの忍の拘束ぐらい、すぐ突破してくると思うのですが」


それまで綱手様と紅がしていたやりとりを黙って聞いていたアスマが、納得できないとでも言うような表情を浮かべそう漏らした。

たしかに、カカシは伊達に火影候補と呼ばれる男ではない。
亡き親友から受け継いだ写輪眼を用いコピーした術の数は千以上とも言われ、元々備わっていた圧倒的なセンスも相俟っておそらく絶対、今現役の木ノ葉の忍の中で名実ともにトップたる男。

だからアスマの言う通り、そんなカカシがおいそれと捕まっているだけとは思えない。いつも通り飄々とした顔をして、「いやー、参ったよ」なんて笑って頭を掻きながら、今にも帰ってきそうな気がしてならない。

そんな私たちの予想は、未だ険しい表情を浮かべる綱手様を見て、外れているのだと実感する。


「…これはあたしの予想だが、敵はおそらく、鬼灯城の関係者だったのではないかと思っている」
「!……鬼灯城、ですか」


このタイミングでまさかその単語が出てくるとは思わず、そしてその言葉が意味するところを理解してしまった私たちは、そろって身の毛立つと同時に愕然とした。


「戻ってきた二人からの情報を総合すると、恐らくカカシは火遁・天牢を食らい、身動きを取れないでいると見ていい」
「……鬼灯城の禁固術ですね」
「あぁ、それならカカシが帰還できないことも納得がいく。自分が逃げられないなら二人を逃がし、応援要請をするようにとな」
「えぇ」
「……この意味、おまえなら分かるだろう、マリナ」
「…っ」


そう告げた綱手様の言葉と共に私に向けられる真っ直ぐとした六つの目に息を飲んだ。

私が得意とする忍術は、水遁を用いた雷遁忍術。
火遁・天牢を解くには、術者を消すか海に飛び込むことが必要になる。すなわち、私の水遁でカカシにかかっただろう術を解き、そしてその水遁ごと雷遁で敵を始末しカカシを救うということなのだろう。

握った手に力が入る。
上忍としてそれなりに任務に熟して来てはいるけれど、これほどまでに緊張するものだったろうか。どくどくと今までにないほど脈打つ自分の心臓を落ち着けるように、数度深く呼吸をした。

落ち着け、落ち着け。
私が取り乱してどうする。私が焦ってどうする。大丈夫、カカシは大丈夫。あいつはきっと生きている。生きているから、私が助けるんだ。


「すぐに出立します」
「あぁ。アスマ、紅。おまえ達はマリナの援護だ」
「「御意」」


もう、迷わない。



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