「ついに、今日か…」
広い芝生の真ん中で空を見上げながら独り言ちた。
独り言なんて、私もいよいよおばさんっぽくなってきちゃったなあ。でも仕方ないよね、もうおばさんだもん。そんなことを思うようになった自分に苦笑する。
「どうしたのよ、マリナ」
「!」
そんな声が聞こえたほうに振り向けば、ぴしっと正装をしたカカシの姿。
カカシも正装が似合うくらいには年を取ってて、いつの間にこんなに大人の男になったんだ、ともう嫌って程見てるはずなのに見惚れてる自分が恥ずかしい。
「ううん、なんでもないよ。そろそろ開場だよね?」
「あぁ。みんなどんどん入っていってるよ。お前も行くでしょ?」
「うん」
差し出された手を取って、自然と歩幅を合わせて会場へ向かった。
――ナルトが今日、結婚する。
あの小さくて頼りなかったナルトが、もう結婚だもんなぁ。そりゃ私も年取るはずだよ。ついこの間まで私に抱き着いてにこにこ笑ってたナルトが、もう見上げなきゃならないほど大きくなってるもんなあ。それが嬉しくもあり、どこか寂しくもあるんだけど。
私が里にいなかったときも、ナルトは何度も何度も私を迎えに来てくれた。会うたびに強く逞しくなってるナルトに、いつの間にかミナト先生を重ねてたっけ。
あの頃からずっと、いつだってナルトは私の弟みたいな存在で。幸せを知ってほしくて、繋がりを知ってほしくて。そんな彼は、誰よりも真っすぐ、前だけを見て大きくなった。
孤独に泣いて、ひとりぼっちだったナルトが少しずつ友達を作っていって、今日、やっと本当の意味でひとりじゃなくなる。それがまるで自分のことみたいに嬉しかった。