04




「…先生、あたし家事くらいできるよ?」
「俺がやりたんだからいいの!もうお腹も重いんだし、腰も痛めてるんだから休んでて!」
「……はい」


せっせかせっせか庭で洗濯物を取り込む先生に、呆れたため息をついた。

もうすぐ予定日を迎える大きくなったお腹を撫でながら、ソファに座ってさっきから一切休まない先生を眺める。
あたしの予想通り、あれから先生は事あるごとに仕事を切り上げて帰ってきて補佐役のシカマルにどやされたり、ばれないようにナルトに変化して帰ってきたのに残した影分身がシカマルにばれてまたどやされたり。この半年くらいの間で何度シカマルに怒られたかもう数え切れない。

だけど今日は、そんなずっとそわそわした先生にしびれを切らしたシカマルに『あんためんどくせぇからもう帰れ。明日出直してこい』って執務室を追い出されたって嬉々として帰ってきた。もう、なんか子供みたいで呆れて笑うしかないけど、それだけ大事に想ってもらえるのは奥さんとしては嬉しいわけで。


「よし、洗濯物は終了。あとは?なにかしといてほしいことはない?」
「…もうなにもないです。ありがとう」


家中ピカピカだし夕飯の支度も終わってるし、文句のつけどころのない完璧な段取りにこれ以上は何も言うまい。


「あ、蹴った」
「うそ、まじ!?」
「うん、ほらこの辺」


あたしがそう言うと庭から飛び帰ってきた先生が、恐る恐るあたしのお腹に手を付ける。


「………蹴った!」
「元気だねぇ」
「なんか、俺すんごい感動してるんだけど」
「あれ、初めてだったっけ?」
「いっつも俺がいない間だったからねぇ」


「早くパパにお顔を見せて〜」
って緩み切った顔でお腹に頬ずりをする先生に笑った。


「ねぇ、マリナ」
「んー?」
「…もう、ひとりで抱え込むのはやめてな」
「…」
「この子が生まれたらおまえはお母さんだけど、それと同時に俺もお父さんだからね。結婚するときに俺がおまえに全部さらけ出したように、おまえにもそうしてほしいわけよ」
「…うん」


そう言いながらあたしの隣に腰かけた先生は、今度はあたしの頭を優しく撫でてくれる。


「だから、我慢はしない。これ新しい約束ね。そんで一緒に、お母さんとお父さんになっていこう」
「…うん!」






(もうすぐ会える、この子と一緒に)

fin.
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