07





「失礼します」


ぐいぐいと引っ張られたままカカシ先生に連れてこられたのは、里の中でもあまり来ることがない地域のなんだか立派な構えの建物の中の、さらに重厚そうな扉の奥。そこにある椅子に座ってきょとん、とあたしたちを見るのは、木ノ葉のご意見番であるホムラ様とコハル様。

もうなんで急にご意見番のお二人の前に来てるわけ!?もうわけわかんないんだけど!なかなかパニックになってる頭の中を落ち着けようとカカシ先生を見上げると、ちょっと緊張してるように見える。


「なんじゃカカシ、突然押しかけてきおって」
「来るなら前もって連絡を…」
「ホムラ様、コハル様」
「…なんじゃ」
「私は、近いうちにこいつと結婚します」


……は?

え、ちょっと待って何言ってんのこの人?言ってることの意味わかってる?いやいやちょっと待ってやっぱり何この状況!!


「カカシせ…ろ、六代目?今ご自分が何言ってるのかわかってます?」
「あぁ。お前と結婚するってご意見番のお二人に言ったんだけど」
「…カカシ。どういうことか説明しろ」


解せぬ、って顔丸出しのコハル様がカカシ先生を睨んでてあたしはなんでか冷や汗が止まんない。

もうなんなのこれ!わけわかんない!!


「実は、このマリナとはもう五年ほど交際しておりまして。彼女も無事成人に達したことですし、そろそろケジメをつけないといけないな、と」
「…それでずっと縁談を断り続けておったのか」
「えぇ。私にはずっとマリナがいましたから。彼女以外と所帯を持つ気はありません」
「…」


真っすぐ強い視線でコハル様を見てるカカシ先生だけど、ずっとあたしの腕を掴んだままの先生の手は緊張からか汗ばんでる。なんだか、いつもの先生とは違って人間らしい。


「ではカカシ、お前はなぜ此奴と交際しておることを隠しておったのだ」
「…それは、」


あたしも、それは気になった。純粋にその理由を聞きたくて、先生の緊張した横顔をじっと見る。


「…私にはなぜか昔から、たくさんの女性が好意を寄せてくれていました。それも、陰からひっそりとというタイプではなく、白昼堂々腕を組んでくるような少々強引な子たちばかりでして」
「それで?」
「…もしその子たちに彼女と交際していることが知れれば、きっと彼女を悲しませることになると思い、関係を内密にするよう頼みました」
「!」


そんな先生の言葉に思わず目を見開いた。そんなにあたしのことを想ってくれてたなんて知らなかったよ。
どうしよう、胸がいっぱいだ。


「ではなぜ、今この時期に所帯を持つ気になったのだ」
「先ほども申し上げた通り彼女はもう成人しましたし、私も今や火影という身です。もし彼女になにかあっても、火影の妻に簡単には手出しできないでしょう。何より、今度こそ私が彼女を守ります」
「…カカシ先生、」


思わず泣きそうになりながら先生を見つめると、先生は優しく笑って、今度はぎゅっと手を握ってくれた。


「マリナよ」
「!…はい」
「覚悟は、できておるか」
「!」


覚悟、ってことは火影の妻になる、ってことかな。

なんだか、夢みたいな話だ。ついさっきまでは、先生とさよならしようと思ってて実際その直前まで行って。さようならって離れようとしたらあれよあれよという間に今度は先生の結婚します宣言。そして今は、今回のことで初めてお話させてもらったご意見番のお二人に覚悟を確かめられてる。

ずっと、こうなればいいなって思ってた。先生と結婚できればそんなに幸せなことはないって。
でも、先生は火影様であたしはただの上忍、年の差だってある。超えるのが難しい険しい壁がたくさんあったから、あたしは先生とお別れしなきゃいけないって思った。

でも、つまるところ浮かんでくるのは簡単なことで。


答えは、たったひとつ。



「――はい。できています」



BACK | NEXT

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -