03






「…今日の報告はこれで以上です」
「ん、ご苦労様」
「…はい」


相変わらず上がらない顔に、昨日とは違ってもう勇気も湧いてこない。でも正直、今は先生の顔を見るのもつらいからこれでいい。


「それじゃあ、あたしはこれで」
「マリナ」
「!…はい?」


そのまま執務室を出ようと背中を向ければ久しぶりに名前を呼ばれた。
なんで。なんでだろ、あたし。ただ名前を呼ばれただけなのにもうこんなにも心がいっぱいになる。


「どうかされましたか?」
「…いや、あの…その…」
「?」


相変わらず書類を見たまま珍しくもじもじするカカシ先生をみつめる。どうしたんだろう、体調でも悪いのかな。


「…今日の、夜」
「!」
「今夜は早く帰れそうだから、その…」
「…先生のお家で待ってます」
「!…あぁ」


珍しく声をかけてくれて、そのうえ今日の夜は一緒に過ごせるんだ。
さっきまでの曇り切った心とは逆転して浮足立ってる自分と、相変わらず書類を見つけたままの先生の耳がちょっとだけ赤くなってる気がしてくすくす笑った。

失礼します、と執務室を後にして気持ち早歩きで夕飯の材料を買いに商店街に行く。
久しぶりに先生と二人で過ごせるんだ。夕飯は何にしようかな。先生の好きなものいっぱい作って待ってよう。食べてくれるかな?
先生の好きなサンマとお味噌汁用に茄子を買って、久しぶりに出した合鍵を使って先生の家に入る。

二週間ぶりに入るそこは少し埃っぽくて先生があんまり帰ってきてないことを意味していてはあ、とため息がもれる。これは夕飯より先に掃除かな。


「よし、やりますか」


買ってきた材料を冷蔵庫にしまってから、腕まくりをして掃除を始めた。



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