02





「今日の報告はこれで以上です。また経過は追って報告すればいいですかね?」
「ん、それでいいよ」
「…はい」


報告をしてる間も書類を見たまま顔を上げずに相槌だけ打つ六代目…もといカカシ先生。
最近はいつもこうだけど、なんだか今日はいつもみたいに素直には引き下がれなくて、他の人の気配を感じないのを確認してからなけなしの勇気を振り絞って声を出す。


「あ、あの…」
「んー?」
「その…今日の夜って…」
「六代目!」


ばたん!と勢いよく扉を開けて飛び込んできたのは顔見知りの中忍の男の子。
途端に今まで上げなかった顔を上げた六代目にさっき振り絞った勇気がすーっと消えていくのがわかった。しかたない、わかってたことじゃん。火影様は忙しいしあたしなんかの話は報告以外で聞く必要もないんだろう。
そう思ってしまうと、顔を突き合わせて話をする二人にゆっくりを背を向けて何も言わず執務室を出てくあたしがいた。


しばらく歩いて、ふと気付けばいつも来る河原。
落ち込んだときとか嫌なことがあったときは、なんでかここに来ていつも川を眺めてる。緩やかな川の流れを見てると、自分の心の中にある嫌な部分とか暗い部分も一緒に流れてくと思っちゃうのかもしんないなぁ。


「…ハァ」


結局、今日も一度も目が合わなかった。朝もさっきも。
いつものことだけど、そろそろあたしも限界なのかもしんない。一応、あたしとカカシ先生は恋人ってやつで。今は上忍だけど中忍時代からの付き合いになるからもう5年くらいだろうか。

付き合って最初に言われたのが、この関係をみんなには秘密にすることだった。
あたしの告白から始まった関係。最初はたとえ秘密でもカカシ先生と付き合えるってだけで嬉しかったからそれでいいと思ったけど、その期間が長くなるにつれて”親友にも言えない”ってことがどんどんあたしの心に押しかかってくるようになった。

本当は、みんなに「カカシ先生と付き合ってるんだよ」って大きな声で言いたい。サクラやいのみたいに、彼氏の愚痴とか好きなところなんかをみんなに話したい。いつも会うのは夜の家だから、お昼の街中で手を繋いでデートもしてみたい。でも、カカシ先生はそれを望まない。


「…もう、わかんないよ」


三角座りをして膝に顔をうずめる。

カカシ先生が火影になってから、ただでさえ少なかった二人で会う時間がさらに減って、会えるのは朝任務をもらいにいくときと帰ってきてから報告するときの二回だけ。一応合鍵はもらってるから家には行けるけど、疲れて帰ってきてあたしがいたら余計疲れるんじゃないかと思ったらこわくて行けない。それでもたまに、なけなしの勇気を振り絞ってあんまり帰ってこられない先生の代わりに掃除とか洗濯とかをしに行くだけ。

最後に顔を見て話したのはいつだっただろう。二人で一緒に過ごしたのはいつだっけ?
思い出すのも難しいぐらい、先生とは過ごしてない。カカシ先生はなんのためにあたしと付き合ってるんだろう。もう、なにもかもわかんないや。



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