03





カカシの顔を見ると、どうしても守りたくなってしまう。
誰よりもいろんな苦難を背負った彼だから、人の荷までも一緒に背負ってきた彼だから。



自分くらいはせめて、カカシを守れるような人でありたい。



マリナが死に物狂いで上忍という地位に上り詰めたのも、最愛のカカシを守るために他ならない。
里一番の忍と謳われるカカシを守るために、カカシの隣で戦うために。カカシの背中を、守るために。

だが、彼女のそんな夢も、儚く散った。

任務中に交戦した相手が悪かった。激戦の末かろうじて四肢は守り切ったものの、忍にとってなくてはならないチャクラを巡らせる経絡系は切断され、頭部に負った傷により脳にも損傷が起こり、左半身は不随。医療忍術のスペシャリストと言われる綱手をもってしても、それは治せないものだった。

話はできる、言われたことを理解もできる。しかし身体が動かない。
最愛のカカシを守ることを生きがいにしていた彼女にとって、今の現状は、死ぬよりもつらい、生き地獄。


カカシの顔を見ることで、マリナはその頃の気持ちを思い出し、そして忍には戻れないという現実に直面する。
リハビリをすれば身体は少しだが動くようにはなる。車椅子を使えば移動もできる。


それでももう、カカシの隣で戦えない。


だからこそマリナは、カカシに自分を守ってくれる人を見つけてほしいと思った。
自分にはもうできないけれど、自分じゃない誰かに、カカシのことを支え、守ってほしいと思った。


だからこそマリナは、カカシを拒絶する。
カカシのことが大切で、幸せになってほしいから。自分にはもう、カカシを幸せにすることはできないから。



だからカカシとは、もうさようならしなきゃ。カカシを、私から、解放してあげなきゃ。



マリナの胸中は、そんな思いで溢れかえっていた。
そんなマリナに、カカシは決意のこもった瞳を向ける。


「…俺は絶対別れないよ」
「!」
「マリナがなんて言っても、俺は絶対別れない。どれだけひどいことを言われたとしても、拒絶されても、俺はずっとマリナのそばにいる」
「……なんで…なんでわかってくれないの、」
「…マリナが好きで、マリナが大切だから。それだけだよ」
「…っ」


そう言い切ったカカシは、ベッドの傍らに腰かけ、嗚咽で震えるマリナの身体をそっと、しかし力強く抱きしめた。


「これからのことは、一緒に考えよう。俺もできる限りリハビリ付き合うからさ。一緒に、ゆっくり、マリナのペースで戦っていこう」
「…っ」
「不安なことは俺に全部ぶつければいい。我慢することはないよ。…今まで俺を支えてくれて、守ってくれて、ありがとう」
「…カカ、シ…っ」
「だから、今度は俺の番だよ」


身体を離して、大粒の涙をぽろぽろと溢すマリナに笑みを浮かべたカカシは、その頬を優しく撫で、額と額を合わせた。


「…遅くなってごめんね。これ、マリナにもらってほしい」
「!」
「これからもずっと、俺のそばにいてください」
「…っ、カカシ…!」


自分の指にいつのまにか光る指輪を見たマリナはカカシに抱き着き、何度も何度も「ごめんね」と謝りながら泣き腫らす。
そんな彼女の背を優しく撫でながら、カカシは彼女は自分が支え切る、と、再びの覚悟を決めた。



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