02




「というわけでよろしくな、マリナ」
「…はい」


カカシさんとカエデさんの姿を見た日から数日。どういう因果か、今日の任務はそのお二人とのスリーマンセル。
つい先日あんなことを考えてしまった手前、やりにくいことこの上ない。でもこのお二人が指名されるほど危険度の高い任務だ。余計なことは考えないで、集中しないと。


「でも、マリナちゃんと一緒なんていつぶりだろうね。会うのもずいぶん久しぶりじゃない?」
「…えぇ、まぁ」


あなたたちがそろってる姿を見るのがつらくて避けてました、なんて口が裂けても言えないから苦笑いで濁す。


「ん?どうした、体調でも悪いか?」
「…いえ、」
「もしそうなら無理はしなくてもいいのよ?」


どこまでも、人のことを見てる人たちだ。
私みたいな嫌な考え方しかできない人間とは違って、この二人は優しさの塊。人のことをしっかりと見ていろいろ心配ができる、人間としてできすぎた人たち。

こんな人たちに、私なんかが追い付けるわけないじゃん。


「本当に大丈夫ですよ!ご心配おかけしてすみません!」
「…ならいいんだけどさ」
「無理はしないでね?つらくなったらいつでも言っていいのよ?」
「ありがとうございます、二人とも」


どうにか張り付けた笑顔でそれだけ言って、二人を促すように任地へ向かった。









「先見部隊の情報によると、敵の数は三十と少し。ここから数キロ行った先の雨隠れとの国境付近に拠点がある。ここまでで質問は?」
「いいえ、ないわ」
「私も大丈夫です」
「よし。…ここからはいつ一戦始まってもおかしくない。二人とも、くれぐれも無茶しないように。必ず、みんなで生きて帰るぞ」
「もちろんよ。ねぇ、マリナちゃん?」
「えぇ」


隊長であるカカシさんから、今回の任務の概要と敵の情報、それから作戦を伝えられて頭に叩き込んだ。
作戦は単純。カカシさん、私とカエデさんの二手に別れて、正面と裏から拠点に忍び込み寝静まってる夜中のうちに敵を殲滅する。それだけ。そう言葉にすれば簡単だけど、実際敵にするのは雨、砂、水の三ヵ国の抜け忍からなる元上忍特別上忍の精鋭たち。そいつらが火の国の小村を制圧したこともあり、今後の危険性を考えて今のうちに手を打っておこうというのが今回の任務。でも、一筋縄では、きっといかない。

特別上忍は、なにか秀でたものを持つ人がなることが多い。
エビスさんなら教育面、ゲンマさんなら護衛面という風に、それぞれ必要に応じて任務に駆り出される。かくいう私も、そういう面がひとつだけあったわけで。


「今回の任務はマリナ、お前の剣術が鍵だからな。ま、とはいえ気負いすぎないで、いつも通り頼むよ」
「剣術に関しては誰もマリナちゃんには敵わないもの。自信を持ってね、あなたは強い」
「…ありがとう、ございます」


尊敬する大好きな二人が認めてくれている、私の剣術。
これひとつで私は特別上忍までのし上がることができた。カカシさんに、たとえ一歩の半分でも、ほんの少しでも近づくことができた。

この力を持てたことに誇りを持つと同時に、絶対に失敗できないという重圧ものしかかってくる。大好きなカカシさんが、私の剣術が鍵だ、と言ってくれた。その期待に応えないと。

腰に下げている愛刀の鞘に手をかけ、ぎゅっと握る。そして肩に入った力を抜くように、眼を閉じて深呼吸をした。


「…お二人の期待に応えられるように、精一杯やります」
「そうこなくちゃな。――幸運を祈る」
「…っはい!」


優しく微笑んでくれたカカシさんに、場をわきまえずきゅん、としてしまった。




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