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「すいとん・すいりゅうだんのじゅつ!」


ひょろひょろ、と微かな水龍がこの子の口から生まれた。悔しそうに唇を尖らせるその頭にぽん、と手を乗せる。


「カンタ、そう焦るな。その年でこれだけ出来れば大したもんだよ」
「でも父さんはもっと大きいの出せるでしょ!」
「そりゃお前、父さんはもう長いことやってるからさ」


「いいもん、俺も父さんと同じくらいのを出せるようになるもん」
そう言ってふん、とそっぽを向く愛息子の顔はいつかのマリナにそっくりで参ってしまう。


睡臥の一件から十年ほど経って、その間にペインの木ノ葉襲撃や第四次忍界大戦もあったけど、俺もマリナも運良く生き延びた。その戦争の時に、俺は写輪眼を失った。
そのせいで気持ちが弱くなってしまった俺を「私が先輩の分も戦うよ」そう言って笑ってずっと支えてくれたマリナと六年前に結婚して、その翌年にこの子が生まれた。

俺とマリナの最愛の息子であるカンタはまるでマリナの生き写し。
誰からも愛されて忍としての才にも恵まれたこの子はみんなの希望だ。


「おーいカカシー、カンター」


そう言っていつかみたいに手をぶんぶん振りながら笑顔で駆けてくるマリナに慌ててカンタと一緒に駆け寄った。


「こらマリナ!走っちゃダメでしょ走っちゃ!」
「そうだよ母さん!転んだらどうするの!」
「…もう、二人して。母さんはそんなにドジじゃありませぇーん」


「それより、じゃーん!お弁当作ってきましたー!」
むっと膨れたかと思えば、そう言って「ほら、ご飯食べよう!」と笑うマリナに思わず笑った。


「あっ、そうだ母さん!見ててよ!」


そう言ってさっきいた場所に走ったかと思えば俺の教えてない印を結びだすカンタ。


「すいとん・みずらっぱ!」
「おおっ!」
「!」


カンタは、さっきの術より会得難易度が低いとはいえ立派な水球を出した。
びっくりする俺とマリナを見て「へへん、前に母さんに教えてもらってからずっと修行してたもんね」そう言って照れくさそうに笑ったカンタはやっぱりマリナにそっくりだ。


「凄いじゃんカンタ!あんたやっぱり天才だよ!」
「へへ、そうかな?だって俺ももうお兄ちゃんだからね!」
「ふふ、そうだね」


「早く産まれておいで」「俺がお兄ちゃんだよー」そんな風に少し目立つようになったマリナのお腹を撫でる二人に微笑んだ。


俺も火影になってこうやって一緒にいられる時間は減っちゃったけど、それでも、いつの日もマリナとカンタ、そして生まれてくる子供の幸せで平和な時間を守りたい。そんな風に思った。





fin.

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