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「…マリナ、」


目の前で睡臥と死闘を繰り広げるマリナからは今まで見てきたどの戦いのときよりも殺気が溢れ出てる。何度も見てきてるはずのテンゾウや暗部たちですら息を呑むほど。そういう俺の膝もちょっと震えてる。


「あいつ、本当に大丈夫なのかよ。ついさっきまで寝込んでたはずだろ」
「…たぶん綱手様がこうなることを見越して何かしてくださってたんだろう。あいつが大丈夫って言ってるならそれを信じるしかないでしょ」
「でも、チャクラがみなぎるって一体どんな術なんです?」
「チャクラを活性化させるツボがあるって話を聞いたことがある。そこを突いたんじゃないかな」


マリナからもらった兵糧丸をガリッと噛む。ゆっくり、ゆっくりとチャクラが巡ってくる感覚がするけどまだ動けるには程遠い。
そんな風に思いながら何か、どうにかしてマリナを手助けできることはないか考える。


「…おいカカシ。お前まさかマリナに手ェ貸そうとか思ってねぇよな?」
「!」
「…先輩、気持ちはわかりますけど、残念ながら今の僕たちに出来ることはありません。僕もアスマさんも他のみんなも手負い、カカシ先輩はチャクラ切れで動けない。これでは…言い方は悪いですけど足でまといになります」
「…っ」
「…今はマリナを信じましょう」


とはいいつつ悔しそうに見えるテンゾウ。
こいつも真面目で情に深いやつだから、俺と同じようにきっと何か出来ないかと考えたに違いない。でも同じくらい冷静なやつだから考えた末何も出来ないと結論が出て悔しがってるんだろう。テンゾウの気持ちは痛いほどわかる。

大切な人間が必死で戦ってるときに何も出来ないのは本当に不甲斐ないし情けない。だけど今俺が出ていったところでやっぱり出来ることはないしましてや動けない。
自分の無力さにため息が漏れる。


「…っ!」
「マリナ!!」


そんなことを考えてると睡臥のクナイと交えてたマリナの刀がびゅん、と飛ばされた。でも空になった両手ですぐさま印を結ぶところを見ればさすがだな、と思うわけで。


「水遁・水衝波!!」


こんな土壇場で、こんな状況でこの量の水を出すマリナはやっぱり只者じゃない。知ってたけど改めて思うわけだ。

マリナが生み出した水は睡臥の動きを完全に封じる。


「雷遁・轟雷柱ごうらいちゅう!!」


マリナの手から放たれる雷の柱が水を伝って睡臥を感電させた。

やっぱりマリナ、お前は凄いよ。


「テンゾウ!今のうちに睡臥を拘束するぞ!」
「はい!」


動けない俺の代わりにアスマたちが睡臥を拘束しに行った。俺も体に鞭打ってなんとかマリナのところへ向かう。


「マリナ」
「先輩…」
「っおい!」


振り返って笑顔を浮かべたマリナはどさっと倒れるけどやっぱり笑ってて。肝が冷えたけど大丈夫そうだと安心しちゃったら力が抜けて、俺も同じように大の字に寝転んだ。


「ねぇ、カカシ」
「ん?」
「ありがとう、助けに来てくれて」
「何言ってんの。当たり前でしょうよ」
「嬉しかった。そんでさ、」


「大好きだよ」
顔だけこっちに向けて薄く笑ったマリナに俺もと返して笑った。


こいつに比べたらちょっと頼りない俺だけど、この笑顔だけは何があっても守りたい、そんな風に思った。


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