「なんだ、そんなもんなのか」
「…っ」
にやにやと笑う睡臥をぎっ、と睨みつけるけど正直こっちはみんな満身創痍。
アスマもテンゾウも暗部たちももうボロボロで、かく言う俺も綱手様に回復してもらったチャクラが切れかけててもう万事休すって状態。睡臥もボロボロだけど俺たちよりは幾分かましに見える。ったく、どんだけ厄介なんだよこいつ。
「五大国最強っていわれる木ノ葉がこの程度かよ。ちぇ…つまんねぇの」
「…」
マリナを綱手様に託して木ノ葉を出てから早数時間。もうマリナは目覚めてるかな?だといいな、そしたら俺も少しは気が楽になる。
そんなことを考えながらゆっくりと左目を閉じて残り少ないチャクラを練る。
「はっ、写輪眼のカカシが写輪眼閉じやがったぜ。つーことはもう反撃はしてこねぇのか?」
「!…カカシ、お前それ…」
「…一発が限度だ。頼むよ、みんな」
「…任しとけ」
俺の意図を察して傷だらけでふっ、と笑ったアスマに続いて暗部たちも飛び出して行った。
さて、もうすぐチャクラが練りきれる。どのタイミングで使うかだな。
サスケが里を抜けて大蛇丸の元へ行って、ナルトが自来也様と修行に出て、サクラが綱手様に弟子入りして、俺が率いた第七班は実質の解隊状態になった。上官である俺は、ただあいつらのすることを見てるだけしかできなかった。
だけどそんな俺でも一応、師なわけで。
あいつらの前に立って背中見せなきゃなんないから、と思って密かに修行を積んでた瞳術“神威”。オビトが遺していってくれた写輪眼のさらに上の瞳術である万華鏡写輪眼を使って行ういわゆる時空間忍術。俺が元々持ってるチャクラ量は決して多くないけどその分仲間のリスクを減らせるからって何度も倒れながら密かに鍛えてた。
「…神威!」
タイミングを見計らってみんなに飛んでくる手裏剣やクナイを時空間へ飛ばした。
ひとつひとつが小さいとはいえ相当な数。体に力は入らないし正直もう意識もぶっ飛びそう。
「! カカシ!」
「先輩!!」
「!」
そんなふたつの声に顔を上げると、俺に向かって一直線に飛んでくるクナイ。どうやらひとつ時空間へ飛ばし損ねたらしい。避けようにも体は動かないしどうすることも出来ない。
マリナ、ごめん。俺はここまでみたいだ。
本当はもっとお前と一緒に過ごしたかったしお前ともっと同じく未来を見ていたかった。不甲斐ない俺を許してくれ。
そして、どうか、幸せになって。
目を閉じて衝撃に備える。
でもいくら待ってもそれは来なくてゆっくりと目を開けると、俺の前に立ち塞がるようにいるのは俺の最愛の人。
「遅くなってすみません、――カカシ先輩」
愛用のチャクラ刀を手にすっ、と立つマリナに照らしてきた光が重なってなんだかとても神々しいものに見えた。