09





「…ハァ」


薄暗い廊下に俺のため息の声が響く。
睡臥のアジトを出て急いで木ノ葉に戻ってきて綱手様と一緒にマリナが処置室に入ってもう何時間経っただろう。
赤いランプがついたままの処置室の扉を半ば睨みつけながらもなお止まらないため息。


「…マリナ」


いつもならなんともない数時間でも果てしなく長い時間に感じる。またため息をついて顔を両手で覆った。

マリナ、どうか無事でいてくれ。
どうか――生きていてくれ。


「カカシ!」
「!…アスマ」
「マリナは?」
「まだ処置室だ。綱手様がやってくださってる」
「…そうか」


息を切らして走ってきたアスマは切り傷だらけで、ため息をひとつつくと俺の隣にドカンと座る。


「睡臥は?」
「…ダメだ、逃げられちまった。今暗部の奴らが引き続き追ってる」
「…そうか」
「そう気負うなカカシ。マリナなら大丈夫だ」
「…あぁ」


とは言ってもやっぱり心が晴れることはなくて。ただひたすら早く出てきてくれることを願うしかできない無力な自分が嫌になる。
アスマは俺の肩にぽん、と手を置くとそのまま去っていった。きっと睡臥のところへ向かったんだろう。

すると、やっとランプが消えて綱手様が出てきた。思わず駆け寄ると難しい顔をしてるわけで。


「…マリナは?」
「…まだ目が覚めないんだ」
「…そう、ですか」
「思い当たることはすべて試してみたんだが、この術はやはり特殊なようでな。これから早急に新しい方法を探すところだ。…すまない、カカシ」
「…いえ」


苦虫を噛み潰したような顔をする綱手様。医療忍術のスペシャリストでもある綱手様でも難しいのか。
あの睡臥は特殊な瞳術の持ち主。その目から相手を幻術にかけて仮死状態にする。たしか、さっき奴も“瞳術を持ってる俺にしか解けない”って言ってたな。

ん?待てよ……瞳術?


「綱手様。ひとつ試したいことがあるんですが」
「構わんが、どんなことだ?」
「睡臥は瞳術の持ち主です。先ほどの戦闘中、この術は瞳術を持つ自分にしか解けないと言っていました。もしかしたら、」
「! なるほど、そういうことか!試してみる価値はあるかもしれん。やってみろ」
「はい」


二の句を言う前に察して下さった綱手様と一緒にマリナのいる処置室に入る。
真ん中にあるベッドの上には呼吸器をつけたマリナが寝てて、部屋にはピッピッというマリナが生きてることを示す音が響いていた。心なしか数時間前よりも顔色が悪くなってる気がして余計に焦りが募ってくる。


「マリナ。必ず助けるからね」


ゆっくりと左目でチャクラを練る。
成功するかはわからないけどやらない後悔よりやった後悔の方がいい。

練ったチャクラを目から手へ流し、マリナの額に指をつける。そのまま流し続けると徐々にマリナの顔色が良くなってきてる気がした。


「! カカシ!」
「…成功、みたいですね」
「あぁ!」


額から指を離すとすかさず綱手様が診てくださる。手早く診察を終えホッと息を吐く綱手様にやっと一安心。


「危機は脱したようだ。よくやってくれた、カカシ」
「いえ、俺は何も…」
「っおい!」


安心からかそれとも予想以上にチャクラを使ったからか、フラッときた俺をすかさず支えて下さる綱手様。どうにか持ち堪えたけど正直立ってるだけでも精一杯。


「チャクラ切れか…」
「…このくらいどうともないです。それより、マリナは…」
「マリナはもう大丈夫だ、じきに目を覚ます。今はそれよりお前だ!」


俺を支えながら「ベッドを用意しろ!」と周りの医療忍者に叫ぶ綱手様。
でも、マリナがもう大丈夫なら俺には行かなきゃならないところがある。


「綱手様、」
「なんだ」
「…回復を、お願いできますか」


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