「…くそっ。どこにいるんだ…マリナ」
入口の守衛を写輪眼で眠らせ、アスマと一緒に慎重にアジトの一室一室を虱潰しに探した。でもどれだけ探しても一向にマリナの姿が見えなくて焦りが募る。
「ったく、これじゃキリがねぇな」
「二手に別れよう。その方がきっと早い」
「けどお前、相手はあの睡臥だぞ?1人で遭遇したらどうすんだよ」
「…どうにかするしかないでしょ。――テンゾウ」
「お呼びですか、先輩」
すぐに姿を現したテンゾウにアスマと一緒に探すように頼む。たしかに一人は危険だ。
「おいカカシ、お前はどうすんだよ」
「俺はいいよ、どうにかするから。それじゃ、俺はこっち行くから2人はあっちを頼む」
背後から聞こえるアスマの制止の声を振り切って次々に部屋の扉を開けていく。さっきまでは慎重に探していったけど、きっともうここまで騒いでたら気づかれてるだろうと気配も消さず堂々と。
「先輩、向こうの部屋はいませんでした」
「…そうか」
息を切らしながら走ってきた二人にふーっと息を吐いた。
気づけばもう最後の部屋。きっとここにマリナはいるはず。ドアノブに手をかけゆっくりと開く。ギギギ、という音と一緒に開けば暗い部屋の奥でぐたりと寝そべるマリナがいて。
「マリナ!」
「!…カカシ」
「先輩」
「…あぁ」
そのマリナと俺たちを阻むように姿を現したのは今回の主犯と思われる睡臥。綱手様の予想は当たってたってことだ。
「これはこれは。コピー忍者が直々にお迎えとは恐れ入ったよ」
「…マリナはどうした」
「今は仮死状態、ってとこか」
「…」
「おっと、そんなに睨むな。この術は瞳術を持ってる俺しか解けねぇよ。つまりお前らに俺は殺せねぇ。さて、どうする?」
にやりと笑う睡臥に眉を寄せた。
嫌な笑い方をしやがる。ゆっくりとホルスターに手をかけたところでテンゾウが俺の前に立った。
「カカシ先輩、こいつは僕達が請け負います。先輩はマリナを」
「…だが、」
「ま、どうにかするさ。早くあいつんとこ行ってやれ」
「…すまない、頼む」
テンゾウに並ぶように立つアスマ。飛び出して行った二人に睡臥を任せ瞬身でマリナの元へ向かう。
マリナを支え起こすと、身体は冷えてるけど微かに息はしてて生きてるのがわかってひとまずは安心。
けど、どうやってこの術を解く…?
「カカシ先輩!」
「!」
「マリナを連れて早く綱手様のところへ!仮死状態でも長く続けば命に関わります!」
「…っ」
睡臥とやり合いながらそう声を荒らげるテンゾウ。いつの間にか暗部たちも戦闘に加わっていて、それでも睡臥は立ち回っている。
命に関わる…?マリナが死ぬってことか?
「何ぼさっとしてんだカカシ!早く行け!」
「…」
「マリナを死なせてぇのか!!」
「!」
死なせたくなんかない。マリナは俺の大切な人だ。誰よりも守りたい、守らなきゃならない大切な人。
そっと、眠るマリナを姫抱きにして立ち上がる。
「…頼む、みんな」
「こっちは任せてください!マリナをお願いします!」
「急げカカシ!」
「…あぁ!」
たん、と踏み出して木ノ葉へ急ぐ。
マリナ。
頼むから踏ん張ってくれよ。