06





「…は?」


綱手様から紡がれた言葉に耳を疑った。
里長に対する態度ではなかったはずだけど綱手様は決して俺を咎めない。

『マリナが拉致された』

先刻そう告げた綱手様。
マリナが拉致?一体どういうことなんだ。


「…あいつの任務は、そんなに危険なものだったんですか?本人からはそうは聞いてないんですが」
「あぁ。あいつに任せた任務は二件とも無事遂行されたと依頼人からも聞いている」
「…じゃあ、」


なぜそんなことに?
そう言いたかった俺の言葉は綱手様の手に制された。
深くため息をついた綱手様は苦しげに眉を寄せて床を睨みつけている。


「これを見てくれ」


そう言って綱手様から差し出された一枚の紙。恐る恐る目を通すと“鬼神は預かった”とただそれだけ書かれてて。

どうやら俺の嫌な予感は当たってしまったらしい。


「中忍二人にCランクの密書運搬任務を任せたんだが、その道中に抜け忍の集団に出くわしたらしくてな。どうやらそこに居合わせたマリナが全てを担ってそいつらを帰したらしい」
「…」
「帰ってきた奴らの話を総合すると、相手は上忍クラスの抜け忍数名。マリナが現れたことが誤算だったらしくひどく驚いていたそうだ」
「…そのくらいの相手なら、マリナが拉致されるなんてことはないと思うんですが」
「あぁ、あいつの実力を考えればそうだろう。しかし、あたしはそれだけじゃないと思っててな」


そう言って綱手様はくるりと椅子を返して立ち上がって、大きな窓から里を見渡す。そして深いため息をひとつ落とした。


「最近、嫌な噂をよく聞くんだ」
「一体どんな?」
「お前、雨隠れの睡臥という抜け忍は知ってるか?」
「…たしか、雨隠れで謀反を企てて身を追われた、ビンゴブックS級の犯罪者ですよね?」
「あぁ。これはあまり公にしてないことなんだが、最近木ノ葉の忍が無差別に襲われるケースが後を絶たなくてな。襲われた奴らの話からすると、どうやらその睡臥が一枚噛んでいるらしい」
「…では、マリナを拉致したのは睡臥だと?」
「あたしはそう踏んでいる」


まっすぐ俺の方に向き直り真剣な目でそう告げた綱手様。
ここで俺にそれを話すってことはつまり…そういうことですよね。


「睡臥の潜伏先は?」
「木ノ葉から雨隠れに向かう直線上にアジトがある」
「こちらです」


サッと現れたシズネから地図を受け取り場所を確認する。ここならトップスピードで二時間もあれば行ける。


「すぐ出発します」
「待て、そう焦るな。いくらお前と言えど睡臥が相手で一人は危険だ。誰かを連れていけ」
「そんな人探ししてる時間はないはずです。今こうしてる間にもマリナの身に何が起こってるか…」
「そんなことは分かっている!!」
「!」


だん!と机を叩いて俺を睨みため息をついた綱手様。


「焦る気持ちもわかる。だが少し冷静になれ。お前が取り乱してどうする」
「…すみません」
「分かればいい。今ならアスマも空いてる、連れていけ。こちらから増援として後ほど暗部を数名送る。異議はないな?」
「はい」
「お前達が最優先すべきはマリナの奪還だ。睡臥は目で幻術にかける、いくら写輪眼があっても油断はするな」
「分かっています」
「…マリナを頼んだぞ」


綱手様の強い眼差しに返すように深く頷き執務室を飛び出した。


「カカシ」
「!アスマ」
「話は聞いた、行くんだろ?」
「あぁ、すぐに」
「んなら早くマリナのやつんとこ行こうぜ。そんで帰ったら1杯奢れよな」
「…もちろんさ」


火影邸の前で待ってたアスマとともにマリナのいる睡臥のアジトへと向かった。



マリナ。
すぐ行くから、もう少しだけ待ってて。
きっと助けるから。もう少しの辛抱だよ。



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