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「…くそっ!!」


木ノ葉病院の廊下。夜も更け静まり返るその道を、息も絶え絶えに一人の男が走りに抜ける。そのあまりの形相に、普段なら廊下は走るなと注意しなければならない看護師も何事かと目を向けるだけに留まった。

男の足は、ようやく止まる。上がる息と高鳴る鼓動を落ち着けようと、男は深く何度か息を吐いた。そして、目の前に広がる銀色の扉をそっと開く。
年季の入ったその扉はぎぎぎと音を立て、その先の空間へと男を迎え入れた。


「…来たか、カカシ」
「…綱手様」


カカシと呼ばれた男は、悲痛な面持ちを向ける綱手にただならぬものを感じる。


「…最善は尽くした。だが…、」


「もう、忍には戻れないだろう」
カカシの視線の先、綱手の脇にあるベッドには、人工呼吸器で命を繋き、至る所を包帯で巻かれた一人の女の姿がある。
カカシは一歩一歩踏み締めるようにベッドへ向かい、か細く息を吐くその女の頬に手を当て、慈しむように、優しく、その名を呼んだ。




「…マリナ、」




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