05





「…お前は…睡臥、だな?」
「お、俺のこと知ってるんだ。嬉しいねぇ」
「五大国で指名手配されてるお前を知らない方が難しいと思うけど」
「まぁ轟いちゃってるからな、俺の名前」


にやにやと笑う睡臥を鞘に手をかけ睨みつける。
こいつは元雨隠れの忍で瞳術を用いた幻術を使う。目を見た相手を深い眠りにつかせて仮死状態にするっていう厄介な術だったっけ。最近入った情報によると各国の抜け忍を集めた組織を作りそのリーダーになってるって話。

正直いえば、幻術がからきし苦手な私にとってこの男は相性が悪い。だからってここで逃げるなんてそんなことは私の心が許さないわけで。さあ、どうする?私。


「ていうか、こいつら弱すぎ。何の役にもたってねぇじゃん」
「…」
「ま、お前らのレベルじゃ木ノ葉の鬼神を相手にすれば手も足も出ねぇか」


そう言いながら自分の仲間を足で蹴る睡臥。その光景を目にしてしまえばぷちん、と切れるのは私の堪忍袋。


「影分身の術!」
「!」


分身を三人出して睡臥を囲んだ、これで最初のあの子たちと同じ状況。


「あんたやるねぇ。私久々に本気でムカついてるよ今」
「あ?」
「自分の仲間を…よく足蹴にできるな」
「は、仲間?笑わせんな。こいつらは仲間なんかじゃねぇ。俺の計画を実行するためのただの駒なんだよ」
「…駒?」


ここまで私を煽れるなんてこいつ逆にすごいな、なんて。私の大嫌いな考え方をしてやがるよこいつ。


「…人は駒にはなれない」
「あ?お前さっきから何言ってんだ?」
「どんな人間にも言えることが一つだけある。あんたにも教えてあげるよ」
「…」
「…仲間を大切にしないやつはクズだ」


瞬時に抜刀して四人同時に切りかかる。


“仲間を大切にしないやつはクズだ”。
それが、カカシ先輩に一番最初に教えてもらったこと。先輩も今までたくさんの大切な人との辛い別れを経験してきて、その1人である仲間が教えてくれたんだって言ってたっけ。
私はその人のことは知らないけど、でも先輩の大切な人なら私にとっても大切だ。


その先輩の大切な人の教えを胸に、私は生きる。


「どんな悪人にも大切に想ってくれる人がいる、信じてくれる人はいる。きっとこいつらだってお前を信じてついていってたはずだ」
「…」
「それをお前は弱いと足蹴にし挙げ句の果てに駒だと罵った。私はお前みたいな考え方は大っ嫌いなんだよ」
「…はっ、さすが木ノ葉。いくら鬼神といえどやっぱ温ぃな」
「…なんだと?」
「生憎だな。俺もお前みたいな考え方は…」
「!」


「大っ嫌いなんだよ」


いつの間にか現れた睡臥の分身に私の影分身の動きを封じられた。
かくいう本体の私も同じく睡臥の本体に動きを抑えられてるわけで。


「てめぇら木ノ葉のその温い考えがこのザマなんじゃねぇの?」
「…」
「仲間だ何だやいやいうるせぇけどよ、お前らは自分のその大切な仲間を死なせてきたんじゃねぇのかよ」
「…っ」


悔しいけどこいつの言う通り。
守ろうとしても守れなかった仲間もたくさんいる。私の実力不足。

でも、それでも私は…。


「…たしかに、あんたの言う通り私は多くの仲間を目の前で失った。守れなかった」
「そうだろ。なら何でそれでもまだ仲間仲間って言えんだよ」
「…私が守れなかったから、その人が見るはずだった未来を私が見てかなきゃなんない」
「は?」
「仲間だから、大切な仲間だから私はその命を背負ってこれからも生きていく。…私の大切な人がそうするように」


カカシ先輩がそうだから。亡くした仲間の命を背負って、その仲間と歩むはずだった未来をたったひとりで進んでるから。

だからここで私が立ち止まるわけにはいかない。


「笑わせんな!てめぇら大国のせいで俺たち小国がどれだけ犠牲になったと思ってんだ!」
「……悪かった」
「そんなのですんだら今こうなってねぇんだよ!!」
「恨むなら私を恨んでくれ。でも木ノ葉には…」
「その温ぃ考えが嫌いだっつってんだよ!」
「!!」


怒りに身を任せる睡臥を宥めるためについ目を見てしまった、途端に遠退いていく意識。


すいません、カカシ先輩。
私やっぱり、まだまだみたいです。



次第に重くなるまぶたに逆らうことなく意識を手放した。




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