03





「…ん、」


ちゅんちゅん、という鳥の声で目が覚めた。ゆっくりと窓の外に目を向ければすっかり日が昇ってる。
昨晩はずっとマリナを待ってて気づいたらリビングの机に突っ伏して寝てたらしい。おかげで背中はガチガチに固まっちゃって枕にしてた腕もだるい。そっと視界に入るのは昨日から全く変ってないそのままの姿の夕飯。それはマリナが帰ってきてないってことを意味していてハァ、とひとつため息をついた。


マリナは暗部時代の後輩で、“木ノ葉の鬼神”なんて異名がつくほどの実力者。里の内外問わず、その名を知らない忍はいない。
普段は気さくで人当たりも愛想も良く誰からも愛されるそんなマリナは、ひとたび戦闘になればがらりと人が変わる。
腰から下げた愛用のチャクラ刀で敵をばったばったと切り裂く様は通り名のようにまさに鬼。未だにあいつと任務に出ると少し膝が震えるほどその姿は恐ろしい。
“最強”。マリナほどその言葉がしっくりくる奴もいないだろう。


でも、そんなに強いあいつでも女で。忍術に長けてても剣術に長けてても、何にしても大人の男の腕力にはかなわないわけで。

…もしかしたら、マリナは…――


「…ダメだ。縁起でもない」


きっと、何か任務先で不都合があって足止めをくらってるだけだ。
きっと、もうちょっとしたらひょっこりと帰ってくるはず。

そう思うのに、なんでか頭の中がマイナスな方にばかり向かう。そんな自分にため息をついたところでコツコツと窓を叩く音が聞こえた。マリナが帰ってきたのかと振り返ると、そこにいたのはマリナではなく呼び出し用の忍鳥。こんな時に、と思いながらも無視するわけにもいかず支度して火影邸へ向かった。


「失礼します」
「あぁ」


がちゃりと執務室の扉を開けると、そこにいたのは神妙な面持ちをした綱手様。


「すまないな、急に呼び出して」
「いえ。それでご要件は?」
「…あぁ」


言いにくそうに口篭る綱手様に嫌な汗が体を伝う。
なんでこんなときまで勘が働いちゃうんだろう。二の句を聞く前にもう何を言われるのかだいたい理解出来てしまう自分が嫌になる。


「…落ち着いて聞いてくれ、カカシ」
「…」


どうか、どうか思い違いであってくれ。
そんな俺の儚い願いはいとも簡単に綱手様の言葉に打ち砕かれた。





「…マリナが――」



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