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「疲れた…」


早朝からの任務を終わって里に着いたらもうすぐ日付が変わろうとしてる。一人暮らしだけどさすがにクタクタだからご飯を作る気にもなれず、最近出来たっていうコンビニとかいうところにご飯を買いに重い足を進める。二十四時間営業はありがたい。


「シカマル、何してるかな」


シカマルと付き合ってもうすぐ二年。
火影がカカシ先生に代がわりしてからというもの、シカマルはその補佐を任されたから、ただでさえ忙しかったのにますます会えなくなって。もう何日会ってないんだろう。そろそろシカマル不足で倒れそう。
そんなことを思いながらコンビニへ進む道中で繁華街を通り抜ける。飲み屋さんがいっぱいあって、私も一杯引っ掛けて帰ろうかななんておっさん臭いことが頭をよぎって思わず苦笑い。本格的にやばいぞこれは。そろそろ時間見つけて会わないと。


「おい、ちゃんと歩けよ重てぇぞ」
「!」


ふと、そんな聞き慣れすぎた声が耳に入ってきてぴたっと足が止まる。
恐る恐る振り返ると、やっぱりいたのはさっき会いたいと思ったばかりの人の背中で。相変わらずめんどくさそうにため息をつく彼の肩には女の人の腕が回されてて思わず思考が停止した。


「ふへへ、シカちゃん〜」
「つかサツキ、お前飲みすぎ」
「久しぶりに会えたんだもん、いいじゃんちょっとぐらい〜」
「へいへい、ったくめんどくせぇ」


「おら、帰んぞ」
そんな風に言って女の人を支えながらこっちを向くシカマルと悲しいことに目が合ってしまった。やばい、目逸らさなきゃ。そう思うのに不思議なことに体は金縛りにあったみたいに動かない。するとみるみる目を見開かせるシカマルがいて。


「マリナ、」
「…っ」
「っおい!」


驚いたようなそんな声に耐えきれなくなって瞬身で家に帰ってベッドに飛び込んだ。

シカマルが浮気?ないないそんなの。あるわけ…ないよ。きっとさっきの女の人が酔っ払って一人で帰れないからシカマルが送ってっただけ。
そう思うのに頭に浮かぶのはさっき聞いた女の人に向けたシカマルの優しい声で。私は最後にいつあの声を聞いただろう。最後にいつ、シカマルに優しくされただろう。
お互い忙しいのはわかってるしそれを責める気は全くない。特にシカマルは今や里には欠かせない大切な忍の一人だってこともわかってる。
対して私はしがないくノ一。何か秀でてるものを持ってるわけでもない、ごくごく平凡な忍。

そりゃ、飽きもするか。

そう思った途端、気づけば涙が溢れた。
思い返せばずっとそうだった。たまに会うときでも話すのは私ばっかり。シカマルはいつも「あぁ」「そう」「へぇ」と返すだけ。たまにしか会えないから少しでも楽しんでほしくて必死になって話題探したりしたっけ。資料室に何日もこもって書類をまとめたりしてるって聞けば任務の前に誰かに託してほとんど毎日お弁当を届けたりもした。寝れない日が続くって聞けば栄養剤を差し入れしてもらったり。いろんなことを私なりに頑張ってやってきたつもりだった。

でも、シカマルは私じゃもうダメなんだ。
なんだかそんな努力が全て無駄に思えてきてまた涙が溢れる。何よりつらいのは、こんなに苦しいのにそれでもまだシカマルが好きな自分の心。


「…忘れなきゃ、なのかな」


忘れた方がお互いに幸せになれるのかもしれない。シカマルはあの人と。私は、シカマルじゃない誰かと。今別れた方が私たちは幸せになれるのかもしれない。

きっと、その方がいい。


「…シカマル、」



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