ちんちくりんが背負うもの

「…もう今日はやめだ」


通常任務を明るい間に終わらせて、そっからカカシさんに報告をした後「これ、よろしくね」と満面の笑みで渡されたのは今度アカデミーに入学する子供たちのそれぞれの情報が雑に書かれた数十枚の紙。要するに、この中からいる情報だけをピックアップしてまとめあげろっつーわけでため息をつきながらも受け取って、資料室でそれを始めてもう何時間だ?気付けば明るかったはずの外はもうどっぷり夜。そういや飯も食ってねぇ。そう自覚しちまえばもうやる気が起こらねぇ。こんなときは飯食って帰ってゆっくり寝んのが一番だ。


「一楽よってくか」


もしかしたらナルトでもいっかもしんねぇしな、そう思って重い腰を上げて火影邸を後にする。
一楽へ向かいながらふと何気なく前を見ると、あうんの門付近にいんのは十人ほどの暗部の小隊。暗部は暗殺なんかが主になっから活動すんのは主に夜。顔を知られるわけにゃいかねぇ暗部にとって夜ってのは都合がいいってわけだ。


「…あいつどうしてっかな」


そんなことを思いながら歩きながらその小隊をぼんやりと眺めてたら、その指揮をとってやがんのは今しがた思った想い人なわけでよ。他のやつとは違ってまだ面をつけてねぇミチルはいつもの緩い雰囲気とは真逆の締まりきった感じで思わずその綺麗さに息をのんだ。

ああ。めんどくせぇ。
あいつのこんな姿はもう何度も見てきたはずだろうが。なんでどきどきしてんだよ俺。かっこわりぃな。思わずがしがしと頭を掻いてさっさと飯食って帰るか、と背中を向ければ途端に俺を呼ぶ声がする。


「おーい、シカー」
「…」
「シカマルー」
「…」
「おいシカトすんなシカのくせに」
「シカシカうっせぇよバカ」


気付かれる前に帰ろうと思ってたってのに気付きゃ振り返ってツッコんじまってる俺がいた。あぁ、やっぱこいつめんどくせぇ。


「おっす」
「おう」
「今帰り?」
「まぁな。カカシさんから今度のアカデミー入学の子供らの情報整理任されてよ」
「あらま。またこき使われちゃってるわけね」
「お前からも何とか言っといてくれよ」
「あー無理無理。カカシ兄はシカがいないとやってけないから」


へらへら笑ってそう言うミチルにハァ、とため息をついた。
さっきの指示してたときの顔とは違った緩み切った顔ってのにだんだんと落ち着きを取り戻してく俺がいるわけでよ。まぁ俺相手にあんな締まった顔されてもどうすればいいのかわかんねぇしこのほうが楽でいい。


「そっちは任務か?」
「うん。久しぶりに外出てくるよ」
「お前がわざわざ出るとなると、例の件か」
「守秘義務、一応あるんだ」
「…そうかよ」
「ごめんね」
「総隊長、そろそろ…」
「今行く。そんじゃシカ、帰ったら一楽でもおごってよ」
「なんでだよ」
「はは」
「ま、気を付けてな」
「ありがとう」


振り返って面をつけたミチルの背中ってのは、暗部の総隊長のそれでよ。
もうずっと長いこと多くの命を背負ってきたちんちくりんのこいつは、俺には計り知れねぇほどの経験をたくさんしてきてるはずだ。苦しいことも悲しいこともつらいことも、何もかも全部背負ってそれでも多くの命の前に立つ。俺の質問もなんかタイミングよくはぐらかされちまうし、んっとにいつまで経っても適う気がしねぇ。そう思っちまう俺は情けねぇのかも知んねぇけど、いつかこいつのことを守れるようなそんな男になりてぇ。
どんどんと遠くなっていくミチルの背中を眺めながらそんなことを思った。




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