たしかな平和

「失礼します、カカシさん書類持ってきたっすけど…って、取り込み中っすか。すんません」


カカシさんに頼まれて整理し終わった書類を手に執務室の扉を開けるとそこには険しい顔をしたミチルとカカシさんがいた。暗部のことで何か報告中かと思って引き上げようとしたらへらっと笑ったミチルが「もう終わったしいいよ」なんて言って扉に向かってくわけでよ。


「じゃ、そういうことで。調査はこのまま続行するってことでいいよね?」
「あぁ、くれぐれも無茶はしないようにね」
「わかってるよ。そんじゃ、シカまたね」
「おう」


入れ違うようにぱたん、と扉が閉まった音の後カカシさんがため息をついてミチルと同じようにへらっと笑った。
今じゃ一人暮らしをしてるあいつだが昔はカカシさんと暮らしてた。だからあいつにとってカカシさんは兄貴でカカシさんにとってあいつは妹。そんな二人の家族みてぇな関係を昔はうらやましく思ったっけか?表情も似てっし血の繋がりはなくてもこの二人は誰がなんと言おうと家族だ。…なんてな。


「で、なんだっけシカマル」
「あぁ。頼まれてた書類、できたんで持ってきましたよ」
「お、やっぱお前仕事が早いねぇ。助かるよ」
「…んで、ミチルがしてた話っすけど、十六夜のことっすよね?」
「…ハァ。お前の勘の良さには参るよ本当」
「この前の会議でずっと名前は上がってたっすから」


「そっか、そうだよね」と困ったように笑うカカシさんに眉を寄せた。
この人がこういう顔をする時ってのは言うべきことじゃねぇかまだ時じゃねぇそんな感じだ。ったく、ミチルのやつずっとそんな案件に絡んでたのかよ。


「ま、ちょっと厄介には違いないけどあいつに任しとけばすぐにどうってことはないよ。それはシカマル、お前が一番知ってるでしょ?」
「…まぁ」
「それとも何?別の意味であいつのことが気になる?」
「!」


にやりと片眉を上げたその顔ってのは昔の俺たちの先生だった時の顔でよ。昔から思ってたが、この人の観察力や洞察力には敵わねぇなと改めて思う俺がいるわけだ。


「言っとくけどミチルは俺の大事な妹だから。そう簡単にはあげないよ」
「…そんなんじゃねぇっすよ。それにあいつがこういうことに鈍感なのはカカシさんが一番知ってんじゃねぇんすか」
「そりゃあ小さいころからあいつのことはずっと見てきてるから。お前よりもね」
「そっすか」
「…でも、ま。シカマルが本気だっていうなら考えないこともないけど」
「!」
「決めるのはミチルだからね」


「じゃ、書類ありがとう。今日はもう上がっていいよ」そう言ってまたへらっと笑ったかと思えば俺がまとめた書類に目を通すカカシさんにため息をついてから執務室を出た。


火影邸の門をくぐった途端出たのはため息。
カカシさんの言う通り、あいつに愛だの恋だのに気付けってほうが間違ってるってのはわかってる。そんでももうずいぶん長いことあいつのことを想ってきたわけで。いい加減報われるっつーか、気持ちを伝えてもいいんじゃねぇかとも思うわけだ。けど俺にそんなことができんのか?なんて思いも同時にあるもんで、ああめんどくせぇ。考えんのはやめだ、キリがねぇ。

気付けば足が向いてた特等席。空もいい感じに晴れてっし昼寝でもするか。そんなことを思いながら階段を登り切る直前、目の前には先客がいるわけでよ。いつも通りポテチを食いながらにこにこしてる親友と、その隣で煙草をふかしながらぼーっと空を見てんのはさっきまでずっとしつこいくらい俺の頭を占領してやがった想い人。


「ミチル、ポテチ食べる?」
「ん、ありがとチョウジ」
「ポテチって美味しいよねぇ」
「んー、煙草も美味いよ?」
「僕はいいかなぁ」


そんな平和なやりとりを見てなぜか吹き出すような笑いがこみあげてきて、そんな俺に気付いた二人に片手をあげてその輪に加わった。





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