こんな仮定は飲み込んで

「ミチル」
「お、テマリじゃん」


会議が終わってサツキに急かされながら木ノ葉に帰ろうとしてたら後ろからかかった声に振り向けば、さっきの会議にもいた砂のテマリがいた。
なんだかずいぶん久しぶりに会った気もするなぁ。前の会議以来だから半年ぶりかな?そんな風に思いながら「お疲れ」と笑うと「お前は相変わらずだな」と呆れたように笑うテマリは相変わらず綺麗だ。


「お前、ちゃんと休んでるか?シカマルからあまり姿を見ないと聞いていたが」
「…ま、寝てはいるよ。大丈夫」
「…そのいいぐさではあまり休んではないな。せいぜい仮眠といったところか」
「ぐっ」
「きちんと休息は取らないとだめだ。お前が倒れれば木ノ葉の暗部は回らないだろう?」
「…すんません」


腕を組んで眉を寄せるテマリに苦笑いを浮かべながら頭を掻いた。
テマリたち三兄弟はあたしの過去を知る数少ない人たち。三人を除けば、あたしを保護してくれた綱手姉に育ててくれたカカシ兄ぐらいか。あとは亡くなった三代目のじいちゃん。

あたしの過去は少し特殊で、できるならあまり思い出したくないそんな過去。でも、こんなあたしにも心から大切だと思える仲間ができた。だからいつかは話さなきゃいけない、とは思ってるわけで。


「…ところで、十六夜の件だが、」
「そう来るだろうと思ってたよ」


そんなことを思っていると、途端に真剣な表情で声を潜めて予想通りの言葉を言ったテマリにハァ、とため息をついた。
こんなに人が通るところでできる話じゃないからサツキに「先に行ってて」と伝えて、テマリと一緒に近くの空いてる部屋に入った。


「で、十六夜の話だったっけ?」
「…あぁ。さっきの会議では詳しいことは話せなかったんだが、最近風の国の小さな里や村が襲われるケースが頻発していてな。そしてその共通点は、現場に残された壁に同じ月の模様があることなんだ」
「…十六夜の刻印、だよね」
「あぁ。我愛羅も何か対策が打てないか考えてはいるんだが、何せ奴らは得体が知れない。どこの誰だか、数さえ知られていないからな。火の国はどうだ?」
「まったく同じ状況だよ。その報告を受けてすぐ偵察と感知に長けた小隊を送ったけど、残ってたのはその刻印だけ。あとの手掛かりはまるでなし」
「…やはりそうか」


ハァ、とため息をつくテマリに眉を寄せた。
あたしがここ最近休んでいられなかったのはこの対応に追われてたから。数か月前から突然起こるようになったこの事件。カカシ兄から最優先で当たれって言われて、火の国中の見回りも強化してるのになぜかそれをかいくぐるように奴らは行動を起こす。


「ここまで何も出ないとなると相当の手練れか、もしくは…」
「…里内に内通者がいる、とあたしは見てる」


本当なら自里の仲間を疑うなんてしたくないけど、ここまで何も出ないとその可能性を捨てきれない。それもただのスパイなんかじゃなくて里の内部の、それも重要なポストにそいつが潜んでるような気がする。


「…にわかには信じがたい話だが、」
「普通はそう思って当然だよ。仲間を疑うなんてしたくないからね」
「だが、そう考えると腑に落ちるな」
「…うん」


心配そうな目であたしを見るテマリを安心させようとふっ、と笑う。テマリは優しいから、きっとこんなことになってるあたしを心配してくれてるんだろう。里は違っても、大切な仲間だ。


「ま、この件はちょっとだけ待っててって我愛羅に伝えてくれる?なにか情報が入ったらすぐに式飛ばすから」
「あぁ。だが無理はするなよミチル。ちゃんと休息は取るように」
「…へいへい」


そんじゃあね、とテマリに別れを告げて木ノ葉に向かってるサツキたちを追った。

テマリには言わなかったけど、なんか嫌な予感がするんだよな…。そんな風に思いながら地面を蹴る速度を上げた。




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